従業員エンゲージメントとはどのような指数?高める具体的な方法も
従業員エンゲージメントは、企業の成功に不可欠な要素です。従業員が会社に対して抱く熱意や愛着、自発的な行動は、会社のパフォーマンスに直接影響します。高いエンゲージメントは、働きがいのある職場環境を作り、従業員の満足度を高めるだけでなく、企業全体の生産性向上、離職率の低下、さらには顧客満足度の向上にもつながります。
この記事では、従業員エンゲージメントの概要やメリット、確認方法、さらに従業員エンゲージメントを高める方法について解説します。
目次
1.従業員エンゲージメントとは?
従業員エンゲージメントは、従業員が仕事や会社に対してどれだけ情熱や愛着を持っているかを示す指数です。従業員が自社のミッションやビジョンに共感し、会社への貢献や成長に向けて自発的に行動する傾向の高さを表します。
「従業員満足度」とは異なり、環境や待遇への満足度だけではなく、会社に対する強い絆や信頼、自ら貢献したいという気持ちが背景にある状態です。また、仕事に取り組む前の動機づけを表すモチベーションとも違い、仕事そのものや成果に対する深い関与を含みます。
エンゲージメントの高い従業員は、単に会社からの待遇や仕事の環境に満足しているだけではありません。自分の行動が会社の成功に直結していると感じ、より強い責任感を持って業務に臨むため、業績の向上につながりやすいことが特徴です。
1-1.従業員エンゲージメントを高めるメリット
従業員エンゲージメントを高めることで得られる主な効果は、以下の5つです。
・従業員のモチベーションが上がる
従業員が自社の目標や理念に共感し、自分の仕事に意味や価値を見出せるようになると、仕事に対する熱意が増します。結果として業務の効率性や生産性の向上が期待でき、企業の成長に貢献するでしょう。
・人間関係が良くなる
エンゲージメントが高まると、従業員間の信頼が深まりより良好なコミュニケーションが行われるようになります。相互協力の精神が育つことでチームワークが向上し、職場全体の雰囲気も良くなるのは大きなメリットです。
・離職率が低下する
従業員の多くは、仕事への満足感が高く愛着の湧いた会社からの転職はあまり検討しません。優秀な人材の流出を防ぐだけでなく、定着率が上がることで採用や教育にかかるコストの削減にもつながります。
・顧客満足度が上がる
従業員の仕事に対して前向きに取り組む姿勢は、顧客へのサービスの質の向上に直接影響する要素です。顧客満足度が高まり、顧客との長期的な関係の構築が期待できるでしょう。
・企業の業績が向上する
エンゲージメントの高い従業員は、会社の目標達成に向けて積極的に取り組みます。このような姿勢は企業の生産性向上や売上の増加につながり、結果として企業業績の向上が見込まれることもメリットです。
2.従業員エンゲージメントの確認方法
従業員エンゲージメントを確認する主な方法として、エンゲージメントサーベイが挙げられます。エンゲージメントサーベイは、従業員が会社や職場にどのような感情を持っているか、心理的なつながりやコミットメントの度合いを数値化して把握するためのツールです。このサーベイを通じて、従業員の会社への愛着や情熱、共感度などが可視化され、組織課題の改善に向けた具体的なアクションプランを立てやすくなります。
以下は、エンゲージメントサーベイで確認すべきポイントの例です。
- 従業員が仕事に働きがいを感じているか
- 上司や同僚とのコミュニケーションが十分に取れているか
- 自分の意見が職場で尊重されていると感じているか
- 会社のミッションや目的に共感しているか
- 職場での成長や学びの機会が提供されているか
これらの質問を通じて従業員の現在の状態や改善すべき点を明らかにし、組織全体のエンゲージメントを向上させるための施策を講じることが重要です。定期的なサーベイの実施により、組織の持続的な成長を促進できるでしょう。
2-1.パルスサーベイとの違い
従業員の意識調査には、パルスサーベイという手法もあります。パルスサーベイとエンゲージメントサーベイは、調査の目的・質問内容・実施の頻度に差がある手法です。
従業員パルスサーベイは月1回や週1回といった高頻度で実施し、従業員の現在の心理状態や職場での満足度などをリアルタイムで把握します。数問から10問程度と短時間で対応できる程度の質問量で、日常的なチェックに適した調査方法です。
一方、エンゲージメントサーベイの実施頻度は年に1~2回程度で、数十問から100問程度で従業員の組織への深い愛着や貢献意欲を詳細に測ります。
3.従業員エンゲージメントを高めるには?
従業員エンゲージメントを高めるには、現在のレベルを測定するだけでなく、具体的な改善策の実行が重要です。以下では、企業が従業員のモチベーションを向上させ、より良い職場環境を構築するための施策を解説します。
3-1.企業ビジョンを共有する
企業ビジョンの共有により、従業員が一丸となって目標に向かうための基盤を築けます。従業員が企業の将来像や目指す方向性を共有し理解すれば、その実現に向けた貢献意欲も高まるでしょう。
具体的な施策例は以下の通りです。
- キックオフミーティングで年間の目標とビジョンを共有する
- 定期的に社内報で進捗状況や成功事例を紹介する
- 1on1ミーティングで個々の目標を企業ビジョンと結びつけて設定する
- 社内勉強会や研修会を開催し、ビジョンに対する理解を深める
これらの取り組みを通じて、従業員全員が企業の目指す姿を明確に理解し、共感することがエンゲージメント向上への第一歩となります。
3-2.社内のコミュニケーションを増やす
社内のコミュニケーションが増えて従業員同士の関係性が深まれば、仕事への満足感とエンゲージメントの向上につながります。オープンなコミュニケーションは、新しいアイデアの創出や問題の早期発見にも貢献し、職場の雰囲気を良くするでしょう。
具体的な施策例は以下の通りです。
- 社内SNSやチャットツールを活用し、気軽な情報共有とコミュニケーションを促進する
- サンクスカードや社内イベントを通じて、従業員間の感謝の気持ちや親密さを育む
- 社内勉強会やランチミーティングを定期的に開催し、異なる部署の従業員との交流を深める
社内のコミュニケーションが活発化して職場の居心地が良くなれば、離職率の低下にも寄与します。
3-3.人事評価制度を見直す
人事評価制度を見直し、従業員が自分の貢献を公平に評価されていると感じられるようになれば、モチベーションの向上とエンゲージメントの強化に直結します。人事評価制度に透明性と公平性を持たせることで、従業員は自己成長にもつながる目標に向かって積極的に取り組むようになるでしょう。
具体的な施策例は以下の通りです。
- 360度フィードバックを導入して多角的な評価を得る
- 目標設定とフィードバックのプロセスを明確化する
- 成果だけでなく、プロセスや行動の質も評価基準に加える
- 定期的な評価面談で進捗と成果を共有し、フィードバックを行う
従業員の努力が正しく認識され評価される環境を整えれば、仕事への愛着だけでなく会社への信頼度も高まります。
3-4.ワークライフバランスを整える
ワークライフバランスが整い、従業員が仕事と私生活の両方で満足を得られるようになると、ストレスの軽減や仕事の効率向上につながります。仕事のために自身の私生活や価値観を犠牲にする必要のない会社は、多くの従業員が愛着を持ち貢献したいと感じます。
具体的な施策例は以下の通りです。
- フレックスタイム制の導入で柔軟な勤務時間を可能にする
- リモートワークが可能な環境を整備して通勤時間の負担を減らす
- 有給休暇の積極的な利用を奨励し、休息を確保する
- メンタルヘルスケアプログラムの提供で心の健康をサポートする
- 人員を増やして業務量の配分を適切に整える
これらの施策により、従業員が仕事と私生活のバランスを保ちながら、健康的に働き続けることが可能になります。
まとめ
従業員エンゲージメントを高めることは、企業が直面する多くの課題を解決するための基礎となります。
企業ビジョンの共有、社内コミュニケーションの促進、公正な人事評価制度の構築、そしてワークライフバランスの支援は、従業員が仕事に情熱を感じ、企業への貢献を強化するための具体的な方法です。このプロセスを通じて、従業員は自らの業務が企業の成功にどのように貢献しているかを実感できるようになり、それがエンゲージメントの向上へとつながります。
結果として、企業は生産性の向上、離職率の低下、そして最終的には業績の向上を達成することが可能になります。
従業員エンゲージメントは単なる指標ではなく、企業文化を形成し、持続的な成長を促進するための戦略的な取り組みです。従業員のモチベーションを高め離職率を抑えるためにも、積極的に取り入れましょう。