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試用期間中に解雇を行う際の原則|不当解雇になる事由も解説

企業が内定を出した社員に対し、その人材の能力や適性、会社とのマッチ度をチェック・判断するために設けられた期間が「試用期間」です。試用期間中は決して特例が適用されるわけではなく、本採用の場合と同様の雇用契約で成立されます。

しかし試用期間中は、「無断欠勤・遅刻や目立ったミスはしていないにもかかわらず解雇されてしまった」というケースが報告されることも多々あります。

そこで今回は、試用期間の詳細から、試用期間中における解雇の原則、不当解雇となりやすい試用期間中の解雇事由について紹介します。就職・転職を考えている方だけでなく、新たに採用する従業員に試用期間を設けることを検討している企業の人事担当者の型は、ぜひ参考にしてください。

1.試用期間とは|解約権留保付労働契約の意味も解説

そもそも試用期間とは、人材(労働者)に内定を出して採用するにあたり、その人材の職務遂行能力や適性を評価するために設けられた期間のことです。試用期間は労働基準法で義務化されているわけではなく、企業で任意に設定することができます。しかし、試用期間を設けるためには「労働契約」「解雇」におけるいくつかのルールに則る必要があります。

試用期間中の労働条件は本採用の社員と同等に扱う必要があるため、試用期間中だからと言って本採用の社員よりも給料を低く設定することは不可能です。

また、試用期間を設けるのであれば「解約権留保付労働契約」も自ずと成立します。解約権留保付労働契約とは、試用期間中に企業が人材の労働契約の解約権を留保(保持)し、一定ルールのもと雇用者の労働契約を解約できるという契約です。

要するに、「正当性のある事由であれば、留保解約権を行使して試用期間中に社員を解雇しても良い」ということとなります。解約権を留保しているからと言って、試用期間中の社員を自由に雇用できるといった意味ではありません。試用期間中の解雇が成立するのは、客観的に見ても合理的な理由であり、社会通念上相当と認められた場合のみに限られます。

2.試用期間中における解雇の原則|解雇が認められる可能性の高い事由例も

たとえ試用期間中であっても、正当な事由がなければ企業は人材を事由に解雇することはできません。

労働基準法 第十六条

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用:e-Gov法令検索「労働契約法」

また、試用期間開始後14日を過ぎて解雇する場合は、本採用の社員の解雇と同様の手続きが必要となることにも注意が必要です。

労働基準法 第二十一条

第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。

四 試の使用期間中の者

引用:e-Gov法令検索「労働基準法」

つまり、試用期間開始後14日以内までは即時解雇が可能ですが、14日を過ぎた場合は一ヶ月前(30日前)に解雇予告通知書を作成し、解雇の手続きをしなければなりません。

そして前項では、客観的に見ても合理的な理由であり、社会通念上相当と認められた場合のみ試用期間中の解雇が成立すると説明しました。では、具体的にどのような解雇理由が認められやすいのでしょうか。ここからは、解雇が認められる可能性の高い正当な事由例を紹介します。

2-1.欠勤・遅刻などが多いなど勤務態度が悪い場合

やむを得ない理由ではない欠席や遅刻を繰り返すなど、勤務態度が著しく悪いことが理由の解雇は認められやすいと言えます。しかし、「〇週間・〇ヶ月の間に〇回遅刻したら」といった明確な基準があるわけではなく、欠勤・遅刻が増えたあたりで突然解雇にできるわけでもありません。

欠勤・遅刻が主な理由による解雇は、欠勤・遅刻を繰り返す人材に対して、企業が再三の指導をしても改善の傾向が見られない場合しか、正当な事由と認められません。欠勤・遅刻が目立つ人材に対して特に指導をしていないにもかかわらず解雇を言い渡すと、不当解雇にあたる可能性があるため注意が必要です。

2-2.病気・ケガなどで就業し続けることが困難な場合

試用期間中の社員が病気・ケガなどにより就業が困難となった場合、正当な事由として企業が解雇を言い渡すことが可能です。しかし、病気・ケガで一時的に就業できなくなったからと言って、すぐに解雇を言い渡すことはできません。

基本的に、病気や不慮の事故によるケガなどで一時的に就業できなくなった場合は休職をします。休職をした試用期間中の社員が、医師から「休職後、徐々に復職することも困難」と判断された場合のみ、解雇が正当な事由であると認められます。

「しばらく休職すれば、問題なく復職できるほどに回復する」と医師から言われているにもかかわらず、休職すら認めず突然解雇を言い渡すと、不当解雇となる可能性が高いため注意してください。

2-3.経歴詐称をしていた場合

試用期間中の社員が、応募時に提出した履歴書・職務経歴書に虚偽の内容を記載し、悪意をもって経歴詐称などをしていたことが発覚した場合は、正当な解雇事由として認められます。

特に企業側が、業務を行うにあたり最低条件として求めていた資格やスキルを、実際には保有していなかったというパターンでは、正当な解雇事由として認められる可能性はさらに高くなるでしょう。

条件としていた資格やスキルの詐称ではなくとも、虚偽の内容を記載していたという点に対して、それ以降企業とその社員が信頼関係を構築することは困難と判断することが可能です。信頼関係の構築が困難と判断された場合においても、正当な解雇事由として認められるでしょう。

3.不当解雇となりやすい試用期間中の解雇事由

ここまで紹介したように、正当な事由があれば、労働基準法に守られている試用期間中の社員に対しても解雇を言い渡すことが可能です。

しかし、中には不当解雇とみなされた企業が、裁判に発展して敗訴した判例もあります。敗訴すると多額の慰謝料を支払わなければならず、解雇には少なからずリスクがあると言えるでしょう。

ここからは、不当解雇となりやすい試用期間中の解雇事由をいくつか紹介します。

3-1.予告なく解雇する場合

前述の通り、14日の試用期間を超えた社員に対しては、解雇の際に解雇予告が必要となります。解雇予告が必要な社員に対して予告なく解雇する、つまり即解雇を言い渡した場合は不当解雇とみなされ、裁判問題に発展する可能性が高いです。

試用期間14日以内の社員に解雇予告は必要ありませんが、14日を超えた社員に対してはきちんと30日前に解雇予告通知書を作成・解雇予告手当の支払いをするなど、法律に則った手順で解雇をしましょう。

3-2.スキル・能力不足による場合

スキル・能力不足だけが原因での解雇は、不当解雇とみなされる可能性も否めません。ケースによっては、正当な解雇事由と認められることもあります。

不当解雇とみなされやすいケースは、「指導や教育を行っていないにもかかわらず、単純にスキル・能力不足だけが原因で解雇を言い渡す場合」です。また、明確な基準を設けていないにもかかわらず、後になって基準を下回っているなどの理由で解雇を言い渡すことも、不当解雇とみなされやすくなります。

一方で、スキル・能力不足による場合でも正当な解雇事由としてみなされやすいケースは、「スキル・能力不足以外にも、身勝手な行動ばかりで協調性がないなど何らかの問題がある場合」「教育機関を明確にし、常に指導や教育を行っていたにもかかわらず成績が著しく悪い場合」などです。

このように、スキル・能力不足による場合は状況によっても不当・正当どちらでみなされるかが異なるため、注意しておきましょう。

4.試用期間中における解雇以外の対応策

正当な解雇事由があれば、企業は試用期間中の社員を解雇することが可能です。しかし、場合によっては不当解雇とみなされ、最悪の場合裁判問題へと発展するおそれがあるため、確実に正当だと言える事由がない限りは、なるべく解雇を避けた方が良いとも言えます。

最後に、試用期間中における解雇以外の対応策として、「退職勧奨」「試用期間の延長」の2つをそれぞれ詳しく紹介します。

〇退職勧奨

退職勧奨とは、実際は解雇を言い渡したい社員と交渉をして、自主退職(自己都合退職)をすすめることです。社員が合意をして退職をすれば、一方的な労働契約の解約(会社都合退職)とはならないため、不当解雇となることもありません。解雇時に必要となる解雇予告や解雇予告手当も必要なくなります。

しかし退職勧奨は、社員が退職に応じられるだけのメリットがなければ、トラブルが起こりやすいという点に注意が必要です。また執拗に退職をすすめたり、退職しなければ大幅な減給をしたりするといった行為は「退職強要」とみなされるため、必ず避けましょう。

〇試用期間の延長

試用期間の延長は、違法ではありません。一定の条件を満たしたうえで、試用期間中の社員の試用期間を延長させることが可能です。

しかし、試用期間を延長させるのであれば、そのことを事前に告知していることが必須です。さらに、正当な事由があること・社会通念上妥当と言える期間で延長することも条件となります。

試用期間の延長にも、正当な事由が必要です。正当な解雇事由に近いものとなるため、「今すぐの解雇は考えていないが、少し様子を見たい」といった場合は試用期間の延長を選択することをおすすめします。

まとめ

試用期間とは、企業が内定を出した社員に対し、その人材の能力や適性、企業とのマッチ度をチェック・判断するために設けられた期間のことです。企業には解約権留保付労働契約が成立するものの、試用期間中の社員を自由に解雇できるわけではありません。

試用期間中の社員の解雇が認められる可能性が高い事由例は、主に「欠勤・遅刻などが多いなど勤務態度が悪い場合」「病気・ケガなどで就業し続けることが困難な場合」「経歴詐称をしていた場合」の3つです。反対に、予告なしの解雇やスキル・能力不足による解雇は不当解雇とみなされる可能性があるため、注意してください。

正当な解雇事由があれば、企業は試用期間中の社員を解雇できるものの、場合によっては不当解雇とみなされ、裁判問題へと発展するおそれもあります。確実に正当だと言える事由がない限りは、解雇を言い渡すことをなるべく避け、別の対応策を試みましょう。