再就職支援サービスとは?利用するメリットと2つの注意点
新型コロナウイルスの影響もあり、人員整理を考えている企業は多いのではないでしょうか。しかし、従業員本人にとって人員整理は職を失う大きな出来事です。そのため、企業はできるだけ従業員の負担が増えないように再就職を支援し、トラブルを防止する必要があります。
当記事では、経営者や人事担当者に向けて、人員整理にあたって従業員をケアする方法の1つである「再就職支援サービス」の概要や利用するメリット、実際に再就職支援サービスを選ぶ際のポイントを紹介します。
目次
1.再就職支援サービスとは?ビジネスモデルも紹介
再就職支援サービスとは、リストラや早期退職、希望退職などの企業都合による退職者に対し、人材会社が再就職に向けた支援を提供するサービスです。企業は、再就職支援サービスに委託金を支払い、代わりに再就職が決まるまで支援してもらう仕組みになっています。再就職支援サービスでは、人材を求めている企業が再就職支援サービスに求人情報を公開し、退職者と企業の条件を踏まえてマッチングを図ります。
再就職支援サービスによる主な支援の内容は、下記の通りです。
- キャリアカウンセリングや自己分析
- 求人紹介
- 履歴書や職務経歴書の添削、面接練習
- 入社前後のフォロー
再就職支援サービスでは、キャリアカウンセリングや自己分析により再就職の方向性を明確にした上で、実際に入社が決まるまで一貫してサポートしてもらえます。再就職にかかる労働者の負担を大きく軽減できる点で魅力的なサービスです。
1-1.再就職支援サービスと人材紹介サービスの違い
「人材紹介サービス」は再就職支援サービスと混同されやすいサービスの1つです。どちらもサービス内容は似ているものの、利用目的が違います。
人材紹介サービスとは、人材を求めている企業と条件に合う求職者をマッチングさせ、報酬を受け取るサービスです。キャリアチェンジや給料アップなど、さまざまな目的を持つ求職者が利用しており、ほとんどの人が自分の意志で転職活動を始めています。
一方で、再就職支援サービスは人材を削減したい企業から委託金を受け取り、やむを得ない理由による退職者を求人企業とマッチングさせるサービスです。求職者・求人企業の2者と関わる人材紹介サービスに対し、再就職支援サービスが関わるのは出身企業・退職者・求人企業の3者となります。
2.【企業・従業員別】再就職支援サービスのメリット
再就職支援サービスは、利用する企業はもちろん、従業員側にも複数のメリットがあります。従業員の負担をできるだけ軽くするためには、メリットについて理解した上で利用することが重要です。ここでは、再就職支援サービスのメリットを企業側・従業員側の視点から2つずつ紹介します。
2-1.【企業側のメリット1】退職者の不安や苦痛を和らげられる
定年退職とは異なり、会社都合での退職は従業員にとって大きなショックとなる可能性が高いと言えます。従業員によっては「企業にとって自分は必要なかったのか」と落ち込むこともあるでしょう。しかし、再就職支援サービスを利用することで、企業側が従業員の将来を考えている旨をアピールでき、退職に伴う不安や苦痛を和らげることが可能です。
本来、再就職にあたっては求人開拓から応募書類作成、面接対策までを1人で行うため、労力と時間を要します。再就職支援サービスを利用すれば、就職活動における労力を削減できるだけでなく、退職者にスムーズに次の職場を紹介できるでしょう。
2-2.【企業側のメリット2】退職者とのトラブルを回避できる
再就職先が決定するまで責任を持って支援することは、退職者とのトラブルを防止する効果も期待できます。企業側の都合による退職は、従業員にとって納得できず、訴訟などのトラブルに発展するケースも少なくありません。
しかし、再就職支援があると分かれば、従業員は退職を受け入れてくれる可能性が高くなります。人員整理を理由に退職を言い渡すのは、従業員本人だけでなく企業側にとっても辛いことです。退職者とのトラブルを回避できれば、人事担当者の負担も緩和されるでしょう。
2-3.【従業員側のメリット1】安心して就職活動を進められる
退職者にとっては、豊富なノウハウや経験を持つプロのサポートを受けられることで、不安なく就職活動ができる点がメリットです。人員整理により退職する従業員は、準備をしていない状態で就職活動を始めなければならないため、何の支援もなければ大きな不安を抱えることになります。
再就職支援サービスを利用すれば、不安になりやすい就職活動を丁寧に支援してくれる上に、困ったときはいつでも相談できます。安心感を持って就職活動を進められれば、再就職先もスムーズに決まるでしょう。
2-4.【従業員側のメリット2】スキルアップを図れる
再就職支援サービスでは、再就職に役立つスキルや知識の習得を目的に、セミナーや研修を実施している場合があります。そのため、退職者がスキルアップを図れる点もメリットの1つです。
スキルアップの一例としては、PCスキルやコミュニケーションスキルなどがあります。スキルアップした状態で次のステップに進めれば、給与アップやキャリアアップなども狙うことができるでしょう。
3.企業が再就職支援サービスを選ぶときのポイント
再就職支援サービスには、人材会社によって支援の質にバラつきがあります。そのため、2つのポイントを確認した上で利用するサービスを選びましょう。
・再就職後の定着率をチェックする
再就職後の定着率が高いほど、退職者の特徴と企業の条件を踏まえて、最適なマッチングを実施していると言えます。一方で、定着率が低い場合は「再就職させること」だけが目的となっており、退職者に寄り添った支援になっていない、またはサービスの質が低い可能性があります。再就職先がスムーズに決まったとしても、ミスマッチによりすぐに退職してしまえば、結局労働者側の負担が増えかねません。退職者が自分の能力や個性を生かしてキャリア形成を図るためには、定着率の確認は重要です。
・求人の幅広さをチェックする
業界や職種の選択肢が豊富になければ、再就職者本人が描くキャリアビジョンに沿って希望する企業を選ぶことはできません。そのため、再就職支援サービスを選ぶ際には、求人の幅広さをチェックすることもポイントです。再就職支援サービスのホームページに、取り扱っている求人の特徴や提携企業について記載されていないかチェックしましょう。また、再就職支援サービスの拠点数や実績数なども、求人の豊富さを知る上で重要な要素となります。
4.企業が再就職支援サービスを利用する場合の注意点2選
実際に企業が再就職支援サービスを利用する際には、下記の2点に注意する必要があります。
・「絶対に再就職先が見つかる」と断言しない
再就職支援サービスでは、就職活動に関する専門家が支援してくれるものの、再就職先が必ず見つかるわけではありません。退職者が求める条件が多く最適な企業が見つからない場合、退職者の希望する再就職先の求人公開時期とタイミングが合わず応募先が見つからない場合もあります。そのため、退職者を安心させたいために「絶対に再就職先が見つかる」と言ってしまうと、仮に見つからなかったときにトラブルに発展する可能性があります。他の前向きな言葉をかけるよう意識しましょう。
・一定のコストが発生する
再就職支援サービスの利用にあたっては、1人あたり約50万~100万円の費用がかかると言われているため、一定の予算を確保しなければなりません。コストを少しでも抑える方法としては、再就職支援を行った企業向けに国が実施している助成金を活用する方法が挙げられます。また、再就職支援サービスのプランによっても料金は異なるため、事前に見積もりを取った上で、安価なサービスを利用する方法も1つです。
このように、再就職支援サービスは転職先が100%見つかるという保証はない上、相応の費用がかかります。しかし、再就職支援サービスには少なからずメリットがあるため、注意点を理解し、利用するかどうか検討するとよいでしょう。
まとめ
再就職支援サービスとは、人員整理をはじめとした会社都合で退職する人を対象に、再就職の支援を行うサービスです。キャリアカウンセリングから入社後のフォローまで、一貫して支援してくれるため、退職者の負担軽減やトラブル回避につながります。
再就職支援サービスには企業・従業員の双方にとってメリットがあるものの、サービスによって質は異なるため注意が必要です。再就職後の定着率や、求人の幅広さをチェックし、スムーズかつ希望に合った転職が実現する再就職支援サービスを選びましょう。