派遣会社への応募数は減少している?応募を増やすための方法も
2020年から拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界経済はもちろん、人々の生活・仕事にも多大なる影響を及ぼしました。人件費を削減するため・赤字を減らすためのリストラも増加し、企業からの求人数が大幅に減少します。これは、人材派遣業界も例外ではありません。
「コロナ禍による不景気・就職難」というイメージも定着したものの、実際にどれくらい減少したのか、またコロナ禍がやや落ち着き始めた現在の市場動向はどのようになっているのかを把握している人は少ないでしょう。
そこで今回は、人材派遣会社の応募数・求人数の動向や、派遣会社が求職者からの応募を増やすための方法、「選ばれる派遣会社」になるための心得を紹介します。
目次
1.派遣会社への応募数は減少した?求人数の動向
2019年末に中国で初めて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が確認されて以降、その猛威は2020年2月に日本国内にも訪れました。国内で初めての感染者が確認されてからは瞬く間に拡大し、人々の生活や仕事に支障をきたし始めます。そして、2020年4月段階では派遣会社の求人数も大幅に減少しました。
大手派遣会社の求人数(推移) | |
---|---|
2020年1月 | 201,784件 |
2020年2月 | 203,482件 |
2020年3月 | 203,766件 |
2020年4月 | 174,689件 |
1-1.労働者の数は増加傾向
2020年4月に派遣会社の求人数が減少したことにより、労働者の数も減っていた時期がありました。しかし、一般社団法人 日本人材派遣協会が実施した「労働者派遣事業統計調査(2021年第4四半期)」データによると、派遣社員の実労働者総数は再び増加傾向にあることが分かりました。
全国における派遣社員の実労働者数(推移) | |
---|---|
2019年 | 364,889人 |
2020年 | 353,794人 (対前年比:97%) |
2021年 | 362,753人 (対前年比:102.5%) |
出典:一般社団法人 日本人材派遣協会「(第4四半期)労働者派遣事業統計調査」
派遣社員の実労働者総数が増加した原因には、「多くの企業が先を見通せない状況から脱却した」「リモートワークなど、コロナ禍における経営体制が確立した」などが挙げられます。
近年では、派遣労働者も派遣先企業の正社員と同様のテレワーク活用を推進しており、コロナ禍による経済危機の回復に向けたあらゆる取り組みも実施されています。多くの企業で新たな時代にあわせた勤務環境が整った現在、再び派遣労働者が大幅に減少する可能性は非常に低いといっても過言ではありません。
2.派遣会社が求職者からの応募を増やすための方法5つ
求職者の中には派遣会社への登録を考えていても、何らかの理由で登録を諦める人・途中段階で辞退する人も少なからずいます。求職者からの応募を増やすため、そして派遣社員として理想の働き方をしっかりしてもらうためには、派遣会社側の工夫が必要不可欠です。
ここからは、派遣会社が求職者からの応募を増やすために行うべき方法を5つ紹介します。
2-1.求人を出す際はペルソナを設定する
派遣会社側が行うべき最も重要な工夫が、「ペルソナ設定」です。
派遣案件を探している求職者は、それぞれ理想の条件・働き方が異なります。ペルソナを特に設定せずに求人広告を出すという行動は、「誰のニーズも満たせていない求人広告を掲載する」ということとなります。求職者からの応募を増やすためには、誰の心にも刺さらない方法で幅広い求職者に認知してもらうよりも、1人のニーズに適した方法で自社の魅力を訴求することが望ましいでしょう。
ペルソナ設定の際は、応募者像を具体的にイメージするところから始まります。性別や学歴といった個人属性はもちろん、職務経験や感性といったポイントもペルソナとして設計し、適切なアピールポイントを検討しましょう。
2-2.自社メディアを活用する
訴求内容が限られる求人広告だけでは、求職者にとって「この派遣会社はどのような人材を求めているか」がはっきりと分かりません。派遣会社と求職者のミスマッチが起こる原因は、求める人材の不明瞭さにあります。
互いにマッチした人材を確保するためには、自社メディアの活用がおすすめです。自社で求人メディアを制作し、求職者が知りたい情報をコンテンツとして発信することで、採用後のミスマッチを最大限防ぐことができます。
2-3.SNSを活用する
派遣会社が求職者からの応募を増やすためには、SNSの活用もおすすめです。スマホやパソコンを用いたインターネット利用が主流となった近年、多くの人がSNSを介してあらゆる情報を入手しています。求人情報も例外ではなく、SNSを活用した求人・採用活動を指す「ソーシャルリクルーティング」という言葉も誕生しました。
SNSでは、企業アカウントを作成し、求職者に有益な情報を提供します。各媒体によって利用者層は大きく異なるため、設定したペルソナの年代に適した媒体を利用することが重要です。拡散性の高いSNSであれば、投稿した内容が「バズる」ケースもあります。認知度を急激に高めることはできるものの、一過性となることも多々あるため、バズを狙うばかりではなく地道に有益な情報を発信することをおすすめします。
2-4.リスティング広告を活用する
採用後のミスマッチを防ぐため・需要に適した人材を確保するためには、自社メディアの活用がおすすめと紹介しました。しかし、自社メディアを制作するだけで、それが多くの求職者に見てもらう工夫ができていなければ、意味がありません。
制作した自社メディアの存在をより多くの求職者に認知してもらうためには、リスティング広告が最も有効です。リスティング広告は検索エンジンで何らかのキーワード検索をしたときに最上部に表示される広告のことで、ニーズが高まっているユーザーへの訴求方法として適しています。
また、リスティング広告の効果を最大限発揮するためには、遷移先のランディングページや自社メディアの質も非常に重要です。自社メディアに多くのコンテンツを掲載することはもちろん、ランディングページの制作も行ったのち、リスティング広告を打ち出すようにしましょう。
2-5.魅力的な求人原稿を書く
「常に求人募集をかけているものの、なかなか応募者が増えない」という場合は、求人媒体に記載する求人原稿に問題がある可能性があります。ただ単純に企業の情報や応募条件を記載しているだけでは、求職者にとって「応募するメリット」が分かりません。
また、中には古い求人情報を書き換えずにそのまま掲載しているケースもあります。このような場合、実際に応募・面談まで進められたとしても、「求人に記載されていた情報と実態が異なる」と途中辞退されかねません。
求人原稿は、下記を重視して作成することがポイントです。
- 正確な情報を記載する
- 業務イメージと求める人材を明確にする
- 他社にはないアピールポイントを訴求する
正確な情報の記載や、求める人材、つまり人材要件の記載はマストといえるでしょう。業務イメージを明確にする場合は、なるべく箇条書きを活用して視認性を高めることもポイントです。だらだらと文章を続けて業務内容を記載すると、「結局どのような作業を行うのか分からない」と感じられる可能性があります。
また、他社にはないアピールポイントの訴求も重要です。このとき、単純に魅力を記載するのではなく、実際に自社の派遣人材にインタビューを行い、そのインタビュー内容をQ&A方式などで発信するのもよいでしょう。インタビューはより客観的な意見となるため、多くの応募者が参考にする項目となります。
3.派遣会社が「選ばれる派遣会社」になるための心得
多くの求職者から選ばれる派遣会社になるためには、「人を大切にして信頼を得ること」が必須です。
近年では「ブラック企業」という言葉も浸透しており、いかに労働者を大切にする企業なのかが注目される時代でもあります。派遣会社は特に「労働者」が商品となるため、労働者を大切にしない派遣会社は確実に選ばれません。
どの企業においても、商品の価値を育てることは大切です。労働者が商品となる派遣会社は、人を大切にしながら育てて、価値を高めることが欠かせません。人を大切にして信頼を得ることで労働者の満足度も向上し、「働きやすい会社」というイメージの拡大も期待できます。
3-1.仕事の紹介以外の取り組みが大切
派遣会社はただ仕事を紹介するだけではなく、付加価値を付けることが重要です。
派遣会社をはじめとした人材紹介業は競争が激しく、ただ仕事を紹介するだけでは自社ならではの強みをもつことができません。そのため、案件紹介以外の取り組みを実施しましょう。例えば、人材からのキャリア相談にのり的確なアドバイスをしたり、希望者に面接対策を行ったりなどです。中には、定期的に派遣スタッフへのプレゼント企画を実施する派遣会社も存在します。
このようなプラスアルファの取り組みを実施することで、「応募者数の増加」「優秀な人材の確保」「人材満足度の向上」が期待できるでしょう。
まとめ
2020年から徐々に拡大し始めた新型コロナウイルス感染症により、人材派遣・紹介会社にも応募数の減少という多大な影響を及ぼしました。しかし、多くの企業でコロナ禍における新たな経営体制が確立されたことにより、現在では派遣労働者数も回復傾向にあります。
派遣での働き方を希望する人材が増加した近年、派遣会社は「応募者を増やすための取り組み」が重要です。応募数に伸び悩む場合は、一度現状を把握し、改善に向けた適切な方法であらゆる取り組みを実施してみてはいかがでしょうか。