物流業界における人材不足の原因とは?今後の課題・対策方法も
物流業界は、インターネット通販の拡大や物流需要の増加により、深刻な人材不足に陥っています。トラックドライバーだけでなく倉庫スタッフも不足しているため、近年では物流業界にネガティブイメージがついており、早急に問題を解決する必要があります。
当記事では、物流業界における人材不足の原因について解説します。また、人材不足を改善するための課題や、対策方法も紹介します。企業の人材不足や労働環境の改善を目指している人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.物流業界が人材不足に陥っている原因
現在、物流業界は深刻な人材不足に陥っています。積極的に人材募集をかけている企業もありますが、なかなか人手が集まらないことがほとんどです。物流業界では、なぜこのように慢性的な人材不足が続いているのでしょうか。
ここでは、物流業界が人材不足に陥っている主な原因を3つ紹介します。
1-1.物流の需要が労働人口を超えている
物流業界では、配送の需要に労働人口が追いついていないため、人手の確保が困難となっている状況が続いています。
インターネットを利用した通信販売が一般的となったことで、個人向けの荷物の量は大幅に増大し、配送の中心は企業から個人宅へとシフトました。荷物の調整などで積載率の低いトラックを動かすことが増えたため、ドライバーが不足している状況です。
また、荷物の取り扱い個数が増えたことにより、フォークリフトの運転者・ピッキング担当者・倉庫スタッフなども不足しています。物流業界では24時間体制で荷物の仕分けにあたっていますが、ハードな仕事のため離職率が高く、十分な人員の確保はできていません。
さらに、若者を中心に「物流業界は仕事がきつい」というネガティブなイメージがついてしまったことも、人材不足に拍車をかけています。
1-2.労働者一人あたりの仕事量が増加傾向にある
近年では荷物の個数が増えており、それに伴って労働者一人あたりの仕事量も年々増加傾向にあります。一人あたりの仕事量が増えると生産性が低下し、生産性の低下によりさらに労働者の負担が大きくなっていることも人材不足の一因です。
国土交通省の調査によると、昭和60年から現在まで貨物輸送量が減少していることに対して、宅配便取扱個数は年々増加しています。これは、業界全体の物流量は少なくなっているが、荷物の個数は増えているという状況です。
個人宅への配達が増えたことで、不在による再配達の回数も増加しました。人材不足の中で再配達業務に対応するため、配送スタッフの負担は非常に大きいといえます。
さらに、少子高齢化などでドライバー職の高齢化が進み、若い従業員が少なくなっていることも、負担が増える一因です。こうした問題を解決するため、各企業は生産性向上や作業効率化に取り組んでいます。
1-3.燃料費の高騰により採算が取れていない
物流業界では、人材確保のために待遇改善を進めています。しかし、燃料費の高騰により採算が取れていない企業も多く、労働環境の改善がなかなか進まないことが現状です。
物流業界では、燃料費は人件費の次に大きな比率を占めています。燃料費は世界情勢や経済の状況で大きく変動するため、燃料費の値上がりは運送会社にとって死活問題です。安定した経営状態でなければ人材募集も十分に行えません。
企業にとって、燃料費をはじめとしたコストカットは今後も重要な課題となっていきます。
2.人材不足が顕著な物流業界の課題
物流業界の人材不足問題を改善するためには、自社の現状に合わせた方法で対策を取る必要があります。物流業界には大企業から中小企業までさまざまな規模の企業があるため、自社に何が必要か見極めることが大切です。
ここでは、これから解決が必要となる、物流業界の課題を2つ紹介します。
2-1.人材を獲得する
国土交通省による「トラック運送業の現状等について」の調査では、平成30年4月の物流・運送業界の有効求人倍率は2.68倍と非常に高い結果となりました。一方、日本の全業種の有効求人倍率は1.35倍で、物流業界における人材不足の実態がわかります。
ここ10年のデータを見ても、物流業界の有効求人倍率は2倍を超えており、人材の獲得は大きな課題です。人材の新規採用が追いついていないため、増え続ける荷物の需要に対応しきれず、忙しさから離職につながる悪循環が続いています。人材を安定して獲得できるようにすることで、物流業界の労働状況が改善され、求職者へのアピールにもつながるでしょう。
2-2.業務の効率化を図る
物流業界の人材不足を解消するためには、業務効率化を図ることも大切です。これからは共同配送で積載率を上げる、宅配ロッカーや置き配サービスを拡充して再配達の手間を省くなどの業務改善が求められます。
また、物流業界では配送ドライバーだけでなく、倉庫スタッフも足りていません。これまで作業員が行っていた作業内容をロボットに任せるなど、省人化により作業を自動化したり簡略化させたりすることも必要です。仕分けから配達まで、業務全体の効率を見直すことで、人材不足と労働環境の改善につながります。
3.企業ができる人材不足の対策方法3つ
物流業界の人材不足を解決するためには、あらゆる面で対策が必要となります。それぞれの場面で地道な対策を続けることが、人材確保の近道です。
ここでは、企業ができる人材不足の対策を3つ紹介します。自社の状況に合わせて、積極的に人材不足対策に取り組んでいきましょう。
3-1.労働環境を改善する
労働環境を改善することにより、業界全体のイメージ回復に努めることは、人材不足の解消につながります。
物流業界は、慢性的な人材不足によってネガティブなイメージがついていることが現状です。肉体労働がきつい、労働条件が悪いといったネガティブイメージは、特に若い人材の確保に悪影響を及ぼします。
そこで厚生労働省は、物流業界の労働環境改善のため「改善基準告示」を制定しました。配送業務は拘束時間が長くなりやすく、労働基準法の規制が及ばない部分があります。しかし、拘束時間・休息時間・運転時間などに基準を設けることで、労働時間の超過を防ぐことが可能となります。
3-2.物流システムを導入する
人材不足対策の一環として、物流システムを導入する企業が増えています。物流システムとはIT技術を駆使した自動化システムのことで、荷捌きやピッキング作業などの業務を人間に代わって行います。また、倉庫管理システムや配送ルートのシミュレーションにより、効率よく配送業務を行うことも、物流システムならではのメリットです。
物流システムを導入することで、労働者一人あたりの作業量を減らすことができます。少ない人員で業務に対応できるようになれば、労働環境の改善にもつながるでしょう。ただし、物流システムの導入には大きなコストがかかります。高額な運用コストに耐えられる企業がまだ少ないため、物流システムの導入はこれからに期待です。
3-3.人材派遣を活用する
物流業界の人材不足の改善策として、人材派遣の活用が注目されています。人材派遣とは、派遣会社の社員を自社に派遣してもらうシステムです。必要なときに必要な人材を素早く確保できるため、人材不足が深刻化している物流業界にとって、非常に役立つ存在といえます。
人材派遣には、直接採用を前提とした「紹介予定派遣」や即日勤務可能な「有期雇用派遣」、期間制限のない「無期雇用派遣」の3つの形態があります。それぞれの派遣形態を組み合わせることにより、繁忙期の増員から慢性的な人材不足にも対応可能です。人材派遣サービスを積極的に活用することで、効率よく人材確保を行いましょう。
まとめ
物流業界の人材不足は、年々深刻化しています。物流の需要に対して労働人口が足りず、一人あたりの仕事量が増加しているなど、人材不足の原因はさまざまです。人材不足を解消するためには、積極的な人材確保や業務の効率化が課題となります。
今後は、各企業で労働環境を改善し、物流システムを導入するなどの対策が必要です。また、人材派遣を活用して、幅広く人材を募ることも効果的といえます。現場の人材不足に悩んでいる企業は、ぜひ人材派遣の活用をご検討ください。