抵触日通知書とは?書き方のフォーマットや通知時期・方法などを解説
「抵触日」という言葉は、派遣会社で働く方や、派遣社員を採用している企業の方にとっては、聞き馴染みのある言葉かもしれません。抵触日は派遣契約において重要なルールであり、これを通知するための書類が「抵触日通知書」です。
当記事では、抵触日通知書とは何か、なぜ必要なのか、どのような内容を記載すればよいのかについて、分かりやすく解説します。抵触日通知書の作成方法や書式、法的な要件について具体的な情報を知りたい方は必見です。
目次
1.派遣における抵触日とは?
2015年の労働者派遣法改正で導入された「3年ルール」により、派遣社員が同一の事業所で働ける期間には制限があります。派遣可能な期間を満了した翌日が、抵触日です。
例えば、2024年9月1日に派遣社員として働き始めた場合、3年後の2027年9月1日が抵触日です。この日から、同じ部署やチームで働き続けられなくなります。ただし、事業所単位であれば、一定の条件を満たすことで、抵触日を延長できるケースもあります。
1-1.抵触日が設けられた背景
派遣における抵触日が設けられた背景には、派遣社員の雇用の安定性やキャリアアップを図る必要性などがあります。
派遣は本来、一時的な人員補充の手段として位置付けられており、労働者派遣法の改正前は、専門性の高い業務であっても派遣の上限期間が設けられていませんでした。そのため、長期間にわたり派遣社員を使い続ける企業が存在し、派遣社員の雇用が安定しない問題がありました。
企業が同じ派遣社員を3年以上必要とする場合には、直接雇用への切り替えや別部署への派遣が必要です。
2.抵触日には2種類ある
派遣における抵触日には、個人単位の抵触日と事業所単位の抵触日の2種類があります。
個人単位と事業所単位の抵触日にはそれぞれ異なるルールが適用され、派遣先企業と派遣社員・派遣元企業の間での調整が必要です。
なお、無期雇用の派遣労働者に対しては、上記のルールは適用されません。
2-1.個人単位の抵触日
個人単位の抵触日とは、特定の派遣社員が同じ組織単位で派遣される期間の最終日の翌日のことです。「組織単位」とは、企業内の部門や課、グループなど、業務の類似性や関連性がある単位を指します。つまり、派遣社員が特定の部門や課に派遣されている場合、その組織内での派遣期間が最大で3年間となり、この期間が終了する翌日が抵触日です。
例えば、2024年4月1日から人事労務部で働き始めた派遣社員の場合、2027年4月1日が個人単位の抵触日となります。2027年4月1日から、その派遣社員は同じ人事労務部で引き続き働くことは原則としてできません。ただし、他部署や組織単位に異動すれば、新たに派遣を続けられます。
2-2.事業所単位の抵触日
事業所単位の抵触日とは、特定の事業所全体で派遣社員を受け入れられる期間の最終日の翌日のことです。「事業所」の定義は、雇用保険の適用事業所の考え方と基本的に同じで、工場、事務所、店舗など、独立した施設や経営単位を指します。つまり、事業所単位の抵触日は、同一の事業所で派遣社員を受け入れられる期間が最大で3年間となることを意味します。
例えば、ある企業の支店で2024年4月1日に初めて派遣社員を受け入れた場合、その支店での事業所単位の抵触日は2027年4月1日となります。抵触日より、その事業所全体で新たに派遣社員を受け入れることは原則としてできません。ただし、事業所単位の抵触日は、過半数労働組合から意見聴取を実施した上で、3年を限度として延長が可能です。
また、事業所単位の抵触日は、個人単位の抵触日よりも優先されます。つまり、事業所単位の抵触日が来ると、個々の派遣社員の個人単位での抵触日がまだ先であっても、その事業所全体での新たな派遣受け入れが制限されることになります。
3.派遣契約する際に受け入れ企業が取るべき抵触日関連の対応
抵触日通知書の作成と通知は、派遣契約を結ぶ際に必要です。意見聴取手続きは、事業所単位の抵触日を迎える際の派遣受け入れ企業に必要な対応です。
個人単位の抵触日の場合には、直接雇用の検討・申し込みをする必要があります。
3-1.抵触日通知書の作成・通知する
派遣先企業は、事業所の抵触日に関して派遣元企業に通知する責任があります。この通知は、新たな派遣契約を締結する際に、事前に行う必要があります。派遣元企業は、事業所の抵触日通知を受け取らなければ、新しい派遣契約を結べません。
通知方法には、書面を交付し郵送やFAXなどで送信する方法、書面のデータを電子メールに添付して送信する方法、電子メールに記載して送信する方法などがあります。口頭での通知は認められておらず、通知の証拠が残る方法で行うことが必要です。
通知内容には、事業所名、事業所所在地、事業所抵触日を含める必要があります。フォーマットに関する規定はなく、必要な情報が正確に記載されていれば自由な書式で作成できます。
また、事業所単位の抵触日を延長した場合は、延長後の抵触日を速やかに派遣元企業に通知することが必要です。
3-2.派遣期間延長の場合は意見聴取手続き
労働者派遣法では、同一事業所での派遣労働者受け入れ期間は原則として3年に制限されています。事業所での派遣期間をさらに延長する場合は、労働組合や過半数の労働者代表に対して意見を聴取しなければなりません。意見聴取は、抵触日の1か月前までに行う必要があります。
意見聴取のプロセスとしては、まず労働組合または過半数の労働者代表に対して、派遣期間延長についての意見を求めます。もし意見聴取の過程で反対意見が出た場合には、派遣企業はその反対意見に対して詳細な説明を行い、理解を得る努力をしなければなりません。説明には、延長の理由や期間、異議への対応方針を含める必要があります。
意見聴取が行われた内容は記録し、事業所の抵触日から3年間保存しなければなりません。記録には、聴取対象の労働組合名や代表者の氏名、通知した内容や日付、意見の詳細、対応策などを記載します。意見聴取の手続きにおいては、派遣先企業が法の趣旨に則り、誠実に対応することが求められます。
3-3.同じ派遣社員を雇用したい場合は直接雇用の申し込み
直接雇用の申し込みは、派遣契約が終了する前に行うことが必要です。具体的には、派遣先企業が派遣元企業を通じて、直接雇用の申し込みを行います。直接雇用の申し込みは、派遣社員が現在の派遣先での仕事に引き続きかかわりたいという意向がある場合、労働者派遣法第33条に基づいて合法的に行えます。
派遣契約期間中の直接雇用への切り替えは、派遣元企業との契約で禁止されていることがあるため、直接雇用への切り替えは派遣契約終了後に行うのが原則です。
4.抵触日通知書の書き方・フォーマット
出典:厚生労働省 福島労働局「事業所単位の派遣可能期間の制限に抵触する日の通知書【例】」
まず、抵触日の通知は派遣契約締結前に行わなければなりません。派遣法第26条第4項・派遣法施行規則第24条の2に基づくもので、通知を通じて、派遣先企業がその事業所における派遣スタッフの受け入れ可能期間を明確にする必要があるためです。通知の方法としては、記録に残る形式での交付が求められており、郵送、FAX、電子メールなどが利用可能です。
通知書には、事業所名、事業所所在地、抵触日を正確に記載することが必要です。書式に関しては法的な指定はなく、自由に作成できます。
まとめ
抵触日は、派遣先企業で同一の事業所における派遣スタッフの受け入れが可能な最長期間の終了日翌日を指します。法的には、3年までの受け入れが可能ですが、事業所単位の抵触日の場合は、延長手続きを行うことでさらに3年間の延長が可能です。延長する場合は、受け入れ期間終了の1か月前までに、労働組合などから意見を聴取し、延長決定後に新しい抵触日を派遣元企業へ通知する必要があります。
抵触日通知書は、事業所名、事業所所在地、抵触日を明記し、郵送、FAX、電子メールなど、記録が残る形式で送付しなければなりません。