MBOとは?導入のメリット・手順を分かりやすく解説
MBO(Management by Objectives)とは、ピーター・ドラッカーが提唱した組織マネジメントの概念であり、日本語では「目標管理制度」とも呼ばれます。MBOの特徴は、従業員本人が目標を定め、達成度合いに応じて人事評価を行うことです。
MBOはバブル崩壊後人件費を抑制しつつ業績向上を図る手段として注目されたほか、近年では加えてリモートワーク中の従業員の評価制度としても活用されています。
この記事では、MBOの導入メリットやデメリット、導入手順について詳しく解説します。
目次
1.MBOとは?
MBO(Management by Objectives)は、ピーター・ドラッカーが提唱した組織マネジメントの概念です。従業員自身が設定した目標の達成度合いで評価を決定するマネジメント手法であり、「目標管理制度」とも訳されます。MBOにおいて、上司は目標達成に向けた取り組みのサポート役にすぎず、進捗確認や助言などを担当します。
日本においてMBOはバブル崩壊後、人的コストを抑制しつつ業績アップを図るための手段として注目されました。年功序列制度から成果主義の報酬制度へ切り替えれば、従業員の組織に対する貢献度とは無関係に人件費が膨らむ状況を回避できるためです。
近年の日本では、上司が働き方を日々確認するのが難しい、リモートワーク環境で働く従業員を適切に評価する仕組みとしてMBOが再び注目されています。
1-1.MBOの種類
MBOは導入する目的に応じて、組織活性型・人事評価型・課題達成型に分類できます。MBOの種類ごとの概要は、以下の通りです。
(1)組織活性型
組織活性型は、組織を活性化する目的で導入するMBOです。組織活性型では従業員自身に個別の目標を設定させ、自主的な行動を促進します。
(2)人事評価型
人事評価型は、人事評価の基準として導入するMBOです。人事評価型では、目標の達成度合いや達成に向けたプロセスを人事評価に反映させます。
(3)課題達成型
課題達成型とは、企業としての目標達成や課題解決を図るために導入するMBOです。課題達成型では組織目標に基づいてチーム目標・個人目標を設定させ、段階的な達成を目指します。
課題達成型は上記の中で唯一、トップダウン形式の運用を原則とするMBOです。組織活性型と人事評価型はボトムアップ形式で運用するMBOにあたり、目標管理制度の運用中、従業員自身の意思が重視されます。
2.MBOを導入するメリット・デメリット
MBOを導入するメリットは多いものの、注意点やデメリットもいくつかあります。以下で紹介するMBOのメリット・デメリットを把握し、自社との相性チェックを行ってください。
2-1.MBOを導入するメリット
企業がMBOを導入すると、以下のメリットや効果を期待できます。
(1)自己管理スキルが高まる
MBOでは目標達成に必要な行動が何であるかを自分自身で判断し、計画的に実行する必要があります。MBOを導入すると従業員の自己管理スキルは高まり、組織としての生産性向上を狙えるでしょう。
(2)透明性の高い人事評価を行える
MBOでは個人目標やチーム目標として、達成すべき状態や数字、および期限を明確に設定します。MBOで設定した目標をもとに人事評価を行えば、透明性の高い評価が可能です。
(3)人材育成につながる
MBOでは管理職以外の従業員も、現状に応じた目標設定や達成に向けた行動計画作成を行うことが必要です。MBOを通じて多くの従業員がマネジメントスキルを習得すれば、将来の管理職候補を育成できます。
MBOには上記のほか、従業員が上司から目標を押し付けられている意識を持ちにくいメリットもあります。自分自身の設定した目標の達成を目指して努力する過程で従業員のモチベーションが高まると、組織としての生産性向上や業務効率化も狙えるでしょう。
2-2.MBOを導入するデメリット
MBOを導入する際には、以下のデメリットを意識しておきましょう。
(1)協調性が低下することもある
MBOで個人目標の達成を過剰に意識し、自分のタスクに集中する従業員が多い場合には、組織内の協調性は低下します。ベテラン従業員が自分のタスクに集中するあまり、後輩指導を怠った場合、技術や知識の伝承も進みません。
(2)MBOに向かない職種も存在する
基本的にMBOは、人事部や経理部といった成果を数値化しにくい職種の評価に不向きです。数値基準を伴わない目標を設定してMBOを運用しても人事評価の透明性は高まらず、従業員の不満を招くリスクがあります。
(3)評価者の負担が増加しやすい
MBOでは一人ひとりの取り組みを個別に評価し、フィードバックを行うことが必要です。MBOにおける評価者は個別の評価やフィードバックに多くの時間を取られてしまい、負担を感じる可能性があります。
MBOの導入による協調性の低下を回避するためには、個人目標・チーム目標の両方を設定させ、MBOを運用する方法があります。もしくは、目標達成までのプロセスも評価対象に含め、互いの協力も含め評価する形式にすれば、協調性が下がるリスクを防ぎやすくなります。
3.MBOを導入する手順
MBOを成功させるためには適切な手順で導入し、運用する必要があります。MBOの目標設定から評価・フィードバックまでの流れを理解し、自社の取り組みに生かしてください。
(1)目標を設定させる
研修や説明会を通じてMBOの概要を説明した上、従業員自身に目標を設定させます。設定する目標には「新商品の年間売上100万円を達成する」など、期限と具体的な数値基準を盛り込ませましょう。
(2)行動計画を作成させる
目標の設定後には、達成に向けた行動計画を作成させます。行動計画はオフィスツールなどを使用し、目標管理シートとしてまとめさせると、進捗管理がスムーズです。
(3)行動計画を実行させる
目標管理シートに従い、行動計画を実行させます。行動計画の実行中、上司は随時進捗を確認し、目標の達成を支援してください。
(4)評価とフィードバックを行う
MBOの取り組み期間の経過後には評価者が目標の達成・未達やプロセスを確認し、人事評価とフィードバックを行います。フィードバックする際には次期の取り組みに生かしてもらうため、評価の理由を詳細に説明しましょう。
従業員が設定した目標は上司やチームのメンバーに共有し、内容を精査する必要があります。ただし、従業員の自主性を尊重してモチベーションを上げるMBOのメリットを高めるため、上司が部下に目標を押し付けることは避けましょう。
4.MBOを導入する場合のポイント
MBOを導入して大きな成果をあげる企業がある一方、想定通りの成果が出ずに悩む事例も少なくはありません。MBOを成功させるためには以下のポイントを意識し、導入・運用することがおすすめです。
(1)適切な難易度の目標を設定させる
設定する目標が高い場合・低い場合のいずれも、MBOが有効に機能しません。従業員のモチベーションを高めるためには、「容易ではないものの、真面目に努力すれば達成可能な難易度」を意識して目標設定させましょう。
(2)組織目標・個人目標をリンクさせる
MBOの個人目標は、組織目標とリンクした内容であることが必要です。MBOの研修を行う際に企業目標・経営理念・部門目標なども伝え、組織としての方向性を提示すると、個人目標とのミスマッチを回避できます。
(3)定期的な面談を実施する
MBOの評価やフィードバックは、半期に1回もしくは1年に1回程度の頻度で行うことが基本です。取り組みの方向性が誤っていた場合、早期に気づいて軌道修正させるためには、行動計画の実行中にフィードバック面談以外の定期的な面談を実施しましょう。
定期的な面談を実施する場合の頻度は、1か月に1回程度が目安です。「部下の人数が多い」などの理由で定期的な面談が難しい場合には日報確認などの手段で、取り組みの方向性や進捗を把握しましょう。
まとめ
MBOは、従業員本人に目標を設定させることで、自主性と自己管理能力を高めるマネジメント手法です。具体的な数字目標や期限を使い、どの程度達成できたかを客観的に評価するため、人事評価の透明性が上がりやすい点もメリットです。一方で、協調性の低下や評価者の負担増といったデメリットも存在します。
MBOを成功させるためには、組織目標と結びついた適切な目標設定をし、定期的なフィードバックを行うのが重要です。また、導入時には研修や説明会を通じて、従業員がMBOの目的と方法を理解する事も大切です。MBOの導入と運用を工夫することで、組織全体の生産性向上や人材育成を促進できます。