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インクルージョンとは?意義とビジネスへの効果・推進方法を解説

「インクルージョン」とは、包括的な企業文化の形成を目指すことを意味します。激化する競争の中で、多様な価値観をもつ人材を活用し、イノベーションを促進することの重要性が再認識されています。

当記事では、インクルージョンの概念とダイバーシティとの関連性、インクルージョンの導入による効果、推進方法および注意点について詳細に解説します。さらに、具体的な企業事例を通じて、インクルージョンの効果的な推進とその成果も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

1.インクルージョンとは?

インクルージョンとは、「包括」や「包含」を意味する単語です。ビジネスにおけるインクルージョンは、さまざまな価値観をもつ人材が個性を発揮しつつ同じ企業に所属し、一体感をもって働いている状況を意味します。

近年では世界レベルでサービス業の競争が激化し、次々に新商品やサービスが登場する時代です。競争を勝ち抜くためには多様な価値観をもつ人材を活用し、イノベーションを活性化する必要があることから、インクルージョンへの注目が集まっています。

さらに日本においては2000年以降に労働人口構造が変化し、企業経営が生産性を維持するための手段として、多様な人材を活用する必要性が生じました。その結果、高齢者・外国人・障害者などを雇用する企業が増加したこともインクルージョンが注目される一因です。

1-1.インクルージョンとダイバーシティの違い

ダイバーシティとは、多様性を意味する単語です。ビジネスにおけるダイバーシティとは、多様な背景をもつ人材が同じ組織に属している状態を指します。

一方のインクルージョンはさまざまな人材の背景や個性の違いを受け入れた上で能力を発揮させ、社員同士の相乗効果につなげている状態を指す概念です。言い換えると、ダイバーシティ経営で多様性を実現した先にあるゴールが「インクルージョン」に該当します。

ダイバーシティとは?日本における課題や企業が推進する方法を紹介

2.インクルージョンの効果

インクルージョン導入や推進は企業と社員の双方にとって、良い効果が期待される施策です。インクルージョンによって期待される企業にとっての良い効果は次の通りです。

企業への効果

・企業のイメージアップを狙える
近年では各種メディアが企業のインクルージョン施策やインクルージョン教育を取り上げる事例も多くあります。企業の取り組みが社会に広く認知されると、イメージアップを図れるでしょう。

・優秀な人材を獲得しやすくなる
多様性を認める企業文化や職場環境はしばしば、求職者への良いアピール要素として機能します。結果として採用市場における競争優位性が高まると、優秀な人材を獲得しやすくなるでしょう。

社員に期待されるインクルージョンの良い効果は、以下の通りです。

社員への効果

・モチベーションが向上する
スキルや個性を生かして働けていることを実感した社員は、モチベーションが向上します。社員のモチベーションの高さが周囲の人にも感染すると職場の人間関係が改善されて、より生き生きと働きやすい環境が整うでしょう。

・家庭事情が理由の離職を回避できる
リモートワークや時短勤務が認められると、働き方の選択肢が広がります。すると介護や子育てによって働き方に制約がある人も離職せず、キャリアの継続が可能です。

3.企業のインクルージョン推進方法

闇雲にインクルージョン施策を行っても良い変化につながらず、取り組みが形骸化するケースもあります。自社でインクルージョンを推進する際には以下のステップを踏み、スムーズな導入を目指しましょう。

ステップ1:意識改革

職場環境や自社の制度を見直して多様な個性を受け入れる仕組み作りを推進することのみでは、インクルージョンが実現しません。インクルージョン施策を行う際にはまず取り組みの目的と目指すゴールを明確化し、自社のビジョンと行動計画を策定します。そして、策定したビジョンや行動計画を経営層や社員に共有してインクルージョン施策の有用性を理解させ、意識改革を進めましょう。

社員の意識改革を進める際には、以下の手段を活用できます。

  • 座談会
  • 社内報、ポスター
  • 研修、eラーニング

上記の他にはランチミーティングなどの機会を利用し、社員と対話する中で教育を行う方法も一案です。

ステップ2:環境作り

策定した行動計画に沿い、自社の課題を解決するための環境作りに取り組みます。たとえば怪我や病気で長時間働くことが難しい人を受け入れるためには、短時間勤務制度やフレックスタイム制の導入が必要でしょう。子育て中の人の活躍を促すためには、事業内託児所の整備やテレワーク制の導入を検討できます。

ステップ3:継続的な取り組み

現場の責任者や社員と継続的にコミュニケーションを取り、行動計画の進捗状況や得られた成果を把握します。得られた成果はWebサイトやプレスリリースを通じて社外に発信していくと、活動を継続するモチベーションにつながるでしょう。

より客観的な視点で進捗状況を把握するためには、離職率や業績など定量的データの推移を追う方法もあります。データとして確認できた良い変化は企業内外に共有し、継続的な取り組みにつなげましょう。

4.インクルージョンを推進するときの注意点

企業がインクルージョン施策を行う際には、取り組む前の状況を正しく把握することが大切です。また、企業がインクルージョンを推進する中で既存社員から反発を受けた場合は、適切に対応しましょう。

以下では、インクルージョンを推進する際の注意点やポイントについて詳しく解説します。

4-1.現状に合った対策をとる

定量的なデータのみを頼りにインクルージョンを推進すると、目的を見失うリスクがあります。行動計画を策定する際は、定量的なデータと定性的なデータの両方から自社の現状を把握し、正しい対策を導きましょう。

インクルージョンの成果も多くの場合、定量的なデータだけでは測れません。効果を検証する際にも従業員満足度アンケートなどを行い、定性的なデータを活用する必要があります。

4-2.社員の反発には根気強く理解を促す

インクルージョン施策の一貫として仕事の進め方や評価基準を変更すると、既存社員から反発を受ける可能性があります。社員から反発を受けた場合は時代の変化やインクルージョンの効果に関して根気強く説明し、正しい理解を促しましょう。

すべての社員の理解を得るためには多くの場合、一定の時間を要します。行動計画を策定する際には反発への対応期間も考慮し、現実的なスケジュールを組みましょう。

5.インクルージョンを推進している企業事例

一部の企業ではすでにインクルージョンを推進し、時代に即した経営を行っています。たとえば、国内の大手総合電機メーカーでは経営危機を経て、国内中心の事業戦略からグローバル社会を見据えた戦略へとシフトしました。新戦略を成功させるための手段として人種・国籍・性別などに関係なく能力ある人材の登用を進めて、一定の成果をあげています。

厨房機器販売事業などを手がける中小企業では、年齢やライフステージを問わずに多様な人材が活躍できる体制を整備する目的で人事制度を見直し、組織の活性化につなげました。

人材派遣サービスなどを展開する国内の大手企業には元々、個を尊重する文化がありました。近年では、インクルージョンを推進する専門部署と現場が連携して3か年計画を策定し、社員一人ひとりが成長できる仕組み作りを図っています。また、同企業では女性管理職比率を高めるための研修制度を拡充し、平等なキャリアアップの機会を提供する方針です。

いずれの企業も自社の現状や課題を踏まえた上で利益につながる対策を検討し、インクルージョンを推進しています。また、取り組み内容や成果をWebサイトで公表し、社会全体に対するインパクトも狙っていることが特徴です。

まとめ

インクルージョンは、多様な価値観を有する人材が個性を生かして働く状況のことです。競争環境が激化する中、イノベーション促進や人口構造変化への対応手段として重要視されています。

ダイバーシティとインクルージョンは異なり、前者は多様性そのもの、後者はその多様性を活用した相乗効果の状況を示します。インクルージョンを導入することで、企業イメージ向上、優秀な人材獲得、社員モチベーション向上といった効果があります。

推進方法は、意識改革、環境作り、継続的取り組みの三段階です。事前に現状を正確に把握し、既存社員の反発対応への適切な対処が重要になります。