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人的資本経営とは|取り組むメリット・実践するためのポイント

企業が持続的に成長するためには、単に優秀な人材を採用するだけでなく、社員一人ひとりの力を最大限に引き出し、企業価値の向上につなげる必要があります。少子高齢化や人手不足、技術革新の加速など、変化の激しい時代において、人材は最も重要な経営資源であり、競争力の源泉でもあります。

当記事では、人的資本経営の定義や取り組む意義、求められる情報開示、導入によるメリット、実践のための具体的なポイントを分かりやすく解説します。社員と企業がともに成長する経営体制や人的資本戦略を構築したい方は、ぜひ参考にしてください。

1.人的資本経営とは

人的資本経営とは、経済産業省の定義によると、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上を目指す経営手法です。従来の経営が人材を「コスト」や「資源」とみなしていたのに対し、人的資本経営では従業員の知識・経験・スキルを投資対象とし、企業の持続的成長の原動力と位置づけます。

大きな特徴は、年功序列や終身雇用に基づく囲い込み型の経営から脱却し、個々の自律性を尊重しながら組織と人が「選び・選ばれる」関係を築く点にあります。また、勘や経験ではなく、人材データを活用して客観的に人的資本を評価・活用する姿勢が重視されています。

出典:経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」

1-1.人的資本経営に取り組む意義

人的資本経営に取り組む意義は、戦略的・経済的・社会的の3つの側面から説明できます。まず戦略的意義として、変化の激しい時代において、現場主導で迅速に判断できる柔軟な組織づくりが求められています。人的資本への投資を通じて人材の育成やスキル強化を進めることで、企業は変化に強い競争優位性を確立できます。

次に経済的意義として、企業価値の源泉が「有形資産」から「無形資産」へ移行する中、投資家は人的資本を含む非財務情報を重視する傾向にあります。人的資本経営は、投資家やステークホルダーへの信頼を高める施策として有効です。そして社会的意義として、ESG投資やSDGsへの関心が高まる今、企業は持続可能な社会の実現に貢献する責任を負っています。人的資本経営の推進は、サステナブルな企業活動の基盤を築く取り組みの一環となります。

2.人的資本経営で求められる情報開示

2023年3月期以降、有価証券報告書における人的資本情報開示が上場企業に義務づけられました。従来の人材育成方針や社内環境整備方針に加えて、「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」「男女間賃金格差」の3項目を開示することが求められています。これにより、企業は経営戦略と人材戦略の関連性を明確に示し、測定可能なKPI(重要業績評価指標)を設定・公表する責任を負うようになりました。

そのため、投資家や有識者の間では、人的資本がどのように企業価値創造に寄与しているか、定量的かつ具体的に開示することが期待されています。人的資本に関する情報開示は、ガバナンスやサステナビリティ情報と並び、企業の透明性と信頼性を高める上で欠かせない要素となっています。

出典:金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について」

3.人的資本経営に取り組む4つのメリット

人的資本経営に取り組むことは、エンゲージメント・個人能力・生産性の向上など、企業の成長基盤を強化する上で多くのメリットがあります。ここでは、主なメリットを解説します。

3-1.従業員エンゲージメントを高められる

人的資本経営によって従業員一人ひとりの成長を支援し、成果を正当に評価する仕組みを整えることで、社員は自らの貢献を実感しやすくなります。自分の成長が会社の成長に直結していると感じられれば、仕事への意欲や責任感が高まり、企業への信頼や愛着も深まります。

こうした高いエンゲージメントは、離職率の低下や生産性の向上にもつながり、結果的に企業全体の業績向上を促進します。人的資本への投資は、従業員と企業双方に好循環をもたらす重要な取り組みです。

3-2.従業員の能力を可視化できる

人的資本経営では、社員一人ひとりのスキルや経験をデータとして管理・分析することで、従業員の能力を可視化できます。これにより、どの社員がどの分野で力を発揮できるのかを明確に把握でき、適材適所の人材配置が可能になります。

また、個々の強みや課題を可視化することで、育成方針を戦略的に立てやすくなり、人材開発や社員のキャリア支援にもつながります。組織全体で人材情報を共有・活用する人材マネジメントができれば、企業の競争力を支えるマネジメントの基盤として機能します。

3-3.生産性の向上につながる

人的資本経営による人材育成やスキルアップ施策の充実は、従業員一人ひとりのパフォーマンスを高め、業務の効率化を促進します。知識やスキルの向上によって無駄な作業やミスが減少すれば、結果としてチーム全体の生産性も向上するでしょう。

さらに、社員が主体的に業務改善に取り組む意識を持つようになることで、組織全体の持続的な生産性向上が実現します。こうした好循環は業績向上にも直結し、企業の競争力強化につながります。

3-4.企業のブランド価値を高められる

人的資本経営に積極的に取り組む企業は、社会的責任を果たしている姿勢が評価され、内外からの信頼を得やすくなります。従業員の成長を支援する企業文化は「働きがいのある企業」としてのイメージ向上にも寄与し、求職者からの注目度も高まります。

また、持続可能な経営や多様性への配慮は、投資家や消費者からの評価にもつながり、企業全体のブランド価値を押し上げます。人的資本への投資は、社会的信頼と企業競争力を高める戦略的な要素と言えるでしょう。

4.人的資本経営を実践するための3つのポイント

人的資本経営を実践するには、単に人材育成を強化するだけでなく、企業戦略と人材戦略を一体的に考える必要があります。ここでは、人的資本経営の導入にあたって意識したいポイントを解説します。

4-1.経営戦略と人材戦略を一体化させる

経営戦略が企業の将来像を描く「道しるべ」だとすれば、人材戦略はその道を歩むための「推進力」です。両者が乖離してしまうと、環境変化に柔軟に対応できず、人的資源を十分に生かせない可能性があります。

まずは経営層と人事部門が連携し、企業が目指す未来像から逆算して必要な人材像や育成方針を設計する人事戦略を立てましょう。バックキャスティングの発想で戦略を紐づけ、全社で共通の目標を持って取り組むことで、持続的な組織成長が実現します。

4-2.開示自体を目的化しない

人的資本開示において形式的にデータを集めたり数値を公表したりするだけでは、企業価値の向上にはつながりません。本来の目的は、人的資本投資を通じて企業の持続的成長を実現することです。

そのためには、開示項目を「見せるため」ではなく「改善と成長のため」に活用する意識が重要です。開示で得られるデータをもとに、経営課題や組織課題を特定し、よりよい人材戦略へとつなげていくことが、意義のある人的資本経営の実践と言えるでしょう。

4-3.自社のありたい姿や独自性を重視する

ガイドラインや他社指標を基準に設定したKPIでは、自社の実情や強みに即した戦略を描くことが難しくなります。「なぜ取り組むのか」「何を重要視するのか」「どう実現していくのか」という3つの問いを軸に、企業としての方向性を明確にしましょう。

また、人事部門だけでなく、経営者や事業部、広報なども全社的に連携し、共通の目標を掲げて推進することが重要です。自社らしさを生かした人的資本経営こそが、真の競争力を生み出すでしょう。

まとめ

人的資本経営は、企業の持続的な成長を支える重要な経営手法です。人材を「コスト」ではなく「資本」として捉え、戦略的に育成・活用することで、企業価値の最大化が可能になります。経営戦略と人材戦略を一体化させ、社員一人ひとりが能力を発揮できる環境を整えることが、競争力の源泉となります。

また、開示を目的化せず、自社のありたい姿に基づいた取り組みを推進することで、投資家や社会からの信頼も高まります。まずは、自社の人的資本にどのような強みや課題があるのかを見直し、経営戦略と結びつけた人材投資の方針を明確にしましょう。