グローバルモビリティとは?グローバル化に欠かせない人事制度を解説
グローバルモビリティは現代ビジネスにおける重要な戦略の1つです。国際間の人事異動制度を整えることで、国際的な視野を持つ人材を育成でき、企業のさらなる成長も期待できるでしょう。
当記事では、グローバルモビリティとは何か、メリットや具体的な実施方法について詳しく解説します。国際的なビジネスの舞台で競争力を高めるためには、グローバルモビリティをいかに効果的に行うかを検討する必要があるので、ビジネス環境の革新を行いたい方はぜひご覧ください。
目次
1.グローバルモビリティとは?
グローバルモビリティとは、国際間での人事異動を指す言葉です。グローバルモビリティには、日本から海外への赴任者のみならず、海外から日本へ赴任する場合も含まれます。
現代のビジネス環境では、国内転勤と同様に国境を越えた人事配置が一般的になってきました。グローバルモビリティは、多様性の受け入れや国籍に関係なく優れた人材の確保が重要となった企業の現状にとって、欠かせない制度です。
グローバルモビリティの実施により、さまざまな国や文化の間で活躍できる人材の育成と、企業の成長および包括的な競争力の強化が期待できるでしょう。
1-1.インターナルモビリティとの違い
グローバルモビリティと混同されやすいのが、インターナルモビリティです。インターナルモビリティとは、社内・関連企業内での人事異動制度のことを指します。従業員の希望に応じて部署や職務を変更することで、適材適所を実現し従業員のモチベーション向上や新たな能力開発を狙う制度です。主に社内公募制度や社内FA制度が用いられ、従業員が自らのキャリアパスの実現に向けて主体的に動くことができます。
一方、グローバルモビリティは、国境を越えた人事異動を意味する言葉です。海外拠点への赴任や、外国人材の国内受け入れなどが該当します。
いずれも、従業員の能力を最大限に発揮させ、企業の競争力強化を目指すための重要な人事施策です。人材の育成・多様な視点の取り入れ・イノベーション創出など、それぞれが企業にメリットをもたらします。従業員のキャリア形成支援と事業成長の両立を図る上で、どちらの人事異動制度も非常に有用です。
2.グローバルモビリティのメリット
グローバルモビリティを取り入れると、企業は多くのメリットを得られます。代表的なのが、グローバル人材の育成・イノベーションの促進・企業成長への貢献です。
以下では、グローバルモビリティがもたらすメリットを3つ解説します。
2-1.グローバル人材を育成できる
グローバルモビリティを進めることで、国境や国籍にとらわれず社内のグローバル人材を育成できます。グローバル人材とは、国際的な舞台で活躍できる能力を持つ人のことです。具体的には、語学力やコミュニケーション能力に加え、異文化への理解力・主体性・協調性など複合的な資質が求められます。通常、このような人材を育成するには、実際に異なる文化や環境で働く経験を積まなければなりません。
グローバルモビリティは、従業員に経験を積む機会を提供できる人事制度です。海外勤務や国際プロジェクトへの参加を通じ、従業員は現地の言語やビジネス慣習を学び、異文化コミュニケーションの能力を高められます。グローバルな視野を持ち、世界各地で活躍できる人材の育成が期待できるでしょう。
2-2.イノベーションが期待できる
グローバルモビリティは、イノベーションを促進する大きな要因となります。グローバル化とイノベーションには強い相関関係があるためです。
従業員が国を越えて異動することで、さまざまな地域の市場ニーズや課題を、情報としてだけでなく肌で感じ取れるようになります。そうした地域の多様なニーズにこたえるには、既存の発想にとらわれない革新的なアプローチが必須です。
また、グローバル人事によって、異なる国・企業・文化・慣習の従業員が集まると、多様な価値観や業務方法、最新テクノロジーに触れる機会も増えます。すると、これまでの発想とは異なる新しいアイデアやソリューションが生み出されるケースが少なくありません。
2-3.企業の成長につながる
グローバル経営は、企業の成長にもつながります。グローバル市場への進出によりブランド認知度が向上すると、企業イメージや価値が高まり、異なる文化圏でも支持されるグローバルブランドの構築が可能になります。
また、海外事業を通じて現地のニーズを的確に捉え、効果的な販売促進を行う高度なマーケティングスキルを獲得することもできるでしょう。さらに、生産拠点を発展途上国に移し人件費や原材料費などのコストを大幅に削減できれば、利益率の向上や新製品投入が可能になり、競争力が上がります。
優秀な人材をグローバルに確保・配置できるのも大きなメリットです。たとえば新規事業開発に乗り出す際、グローバルモビリティを活用すれば、キャリア形成の機会を提供しつつ戦略的要衝に才能ある人材を迅速に投入できます。
3.グローバルモビリティを進めるときの課題
グローバルモビリティを進める際には、異なる国の法律やビジネス慣習を理解しておかなければ思わぬトラブルを起こしかねません。グローバルモビリティに関連する課題を特定し効果的な対応方法を探るのは、企業のリスク回避策として必須です。
以下では、グローバルモビリティにおける主な課題とその解決法について解説します。
3-1.国によって人事制度が異なる
日本と海外で人事制度や人事評価基準が大きく異なる点は、大きな課題の1つです。欧米をはじめとした外国企業では能力や成果を基にした成果主義が主流で、特定のスキルを持つ人材を採用するジョブ型のアプローチを取ります。一方、日本企業では長らく年功序列や終身雇用が基盤となっており、新卒一括採用後に企業内で多様な職務に挑戦するメンバーシップ型が採用されてきました。
グローバル化の進展に伴い、国境を越えた人事管理の重要性が高まっています。しかし、異なる国や地域の人事制度を単に合わせるだけでは対応が難しいでしょう。グローバル企業が成功するには、多様な人事制度を理解し融合させた上で、グローバル人材を公平に評価・登用できる新しい人事制度の整備が必要不可欠です。
3-2.多様化に対応できる環境を作る
グローバル化が進むにつれ、従業員の国籍や文化的背景は多様化します。このような多様性に対応するには、企業の包括的な環境づくりが不可欠です。
まず、さまざまな価値観や習慣を受け入れる寛容な組織風土を育む必要があります。相互理解を深めるための研修や、社員同士のコミュニケーションの場を設けることが大切です。異文化への理解を深め、お互いを尊重し合える風土があれば、多様な人材が自らのアイデンティティを曲げずに活躍できるでしょう。
また、働き方の多様化にも配慮した制度を整備しなければなりません。たとえば、フレックスタイム制や在宅勤務制度の導入により、物理的な距離や時間の制約を越え、個々のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができるようになります。
3-3.従業員エクスペリエンスを向上する工夫を行う
従業員エクスペリエンスは、従業員が職場で経験するすべてを指す言葉です。単なる労働環境だけでなく、企業文化・人間関係・成長機会など、さまざまな側面が含まれます。従業員にとって良好な就労体験ができれば、モチベーションとエンゲージメントが高まり、生産性や定着率の向上が期待できるでしょう。
従業員エクスペリエンスの向上には、従業員の声を聞き、フィードバックを積極的に取り入れ、職場の改善を進めることが大切です。健康や安全性に対する配慮はもちろん、キャリアの成長を支援する教育プログラムやメンタリング制度の提供なども行います。従業員が自分自身の仕事や会社の目的に価値を感じ、充実感を得られるような取り組みが、従業員エクスペリエンスの向上には欠かせません。
まとめ
グローバルモビリティの導入により、企業は多様な文化的背景を持つ優秀な人材を確保できます。多様性を持った社員の協力を促すことで、イノベーションの促進と企業の持続可能な成長が実現されるでしょう。
将来のビジネス環境においても、グローバルモビリティの重要性はさらに高まると予想されます。企業が真にグローバルな競争力を身に付けるためには、グローバルモビリティをさらに推進し、従業員エクスペリエンスを向上させる必要があります。