心理的安全性とは?ぬるま湯組織との違いや高める方法をわかりやすく解説
心理的安全性は、職場環境を改善し、従業員が安心して意見を述べられる状態を示します。心理的安全性が保たれている職場では、従業員が失敗を恐れず、新しい挑戦に積極的に取り組める環境が整い、組織全体の成長にもつながります。
当記事では、心理的安全性の定義やその効果、心理的安全性を高める具体的な方法について解説します。より良い職場を作るために、当記事をぜひ参考にしてください。
目次
1.心理的安全性とは?
心理的安全性とは、企業・組織内の誰に対しても自らの考えや意見を安心して発言できる状態のことです。この概念は、1999年にハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱しました。心理的安全性が高い職場では、発言や提案が拒絶されたり罰せられたりする心配がなく、互いに信頼感を持って働けます。
たとえば、会議の場で革新的なアイデアを自由に話せたりミスを指摘できたりする状況は、心理的安全性が確保されている例です。Googleが行った「プロジェクト・アリストテレス」という研究でも、心理的安全性が生産性向上に寄与する重要な要素となっていることが報告されました。心理的安全性が高い状態を維持するためには、上下関係や個人の評価にとらわれず、率直に意見交換できる環境を作る必要があります。
1-1.ぬるま湯組織との違い
心理的安全性の高い職場は、時折「仲よしチーム」や「ぬるま湯組織」と混同されますが、これらは本質的に異なる概念です。ぬるま湯組織とは、保身を優先して問題点を指摘せず、現状維持を選ぶことで衝突を避ける環境を指します。一見、穏やかで円満な関係性に見えるものの、実際には課題が放置され、組織の成長を阻んでいるケースが少なくありません。
一方、心理的安全性が高い環境では、誰かの提案に対する反論や上司が決めた業務プロセスの改善案など、厳しい意見や課題の指摘も積極的に行われます。通常であれば言いづらい内容も、受け入れられる雰囲気があるので、従業員の主体性が促され、創造性や生産性が向上します。
2.心理的安全性が低い職場に起こり得る問題
心理的安全性が低い職場では、従業員エンゲージメントが低下し、離職率が上昇します。その原因として挙げられるのが、以下の4つの不安です。
原因 | 概要 |
---|---|
Ignorant(無知と思われる不安) | 「こんなことも知らないのかと思われたくない」と考え、質問をためらうようになる不安です。結果として業務への理解度が下がり、誤解やミスが増加します。情報共有が不十分になり、チーム全体の効率が低下するケースも少なくありません。 |
Incompetent(無能と思われる不安) | 「失敗すると無能だと思われるのではないか」と考え、従業員がミスを隠したり、失敗を認めなくなったりする不安です。また、責任転嫁も増え、職場内の信頼関係が悪化します。新しいことへ挑戦したがらなくなり、イノベーションの創出も阻害されます。 |
Intrusiive(邪魔していると思われる不安) | 「発言すると議論の邪魔だと思われるかもしれない」と考え、積極的に提案しなくなる不安です。自由な意見交換が行われなくなり、チーム内のアイデアが枯渇します。組織全体の創造性が低下し、問題解決能力が弱まることもあります。 |
Negative(ネガティブと思われる不安) | 「批判ばかりする人間だと思われたくない」と考え、従業員が現状に対する改善案や反対意見を言えなくなる不安です。これにより、課題が放置されたり、組織の成長が停滞したりします。意見が共有されない職場では、同じミスが繰り返されやすくなるのも問題です。 |
これらの不安が解消されない限り、職場環境やチームのパフォーマンスへの悪影響は避けられないでしょう。
3.心理的安全性が高い職場のメリット
心理的安全性が高い職場は、個人やチームに多くのメリットをもたらします。安心して意見を述べられる環境下では、個々のパフォーマンス向上だけでなく、組織全体の生産性や創造性を高める効果も期待できるでしょう。以下では、心理的安全性が高い職場を作るメリットを4つの視点から解説します。
3-1.パフォーマンス向上が期待できる
従業員が失敗を恐れずに行動できるのが、心理的安全性が高い職場の特長です。「意見が十分に尊重されている」という安心感は、仕事へのモチベーションを高めます。その結果、新しいスキルの習得や効率的な業務遂行が促され、個々のパフォーマンスが向上するケースが少なくありません。
さらに、チーム内で自由に発言できる環境は、業務改善のアイデアや新たなアプローチを生む土壌にもなります。また、心理的安全性のある職場では、従業員が互いに学び合いながら成長できるのも特徴です。リーダーからのフィードバックも素直に受け入れられる傾向にあるため、個人としてもチームとしても成長のスピードが速くなります。
3-2.情報共有が活発化する
心理的安全性の高い職場では従業員が自由に発言できるため、情報共有もスムーズです。このような職場では、個々の意見が組織全体の知見として活用されやすくなります。成功体験のみならず、失敗談も共有することでチーム全体の業務効率が向上するでしょう。
また、発言への心理的ハードルが低ければ、潜在的な問題を早期に発見し、迅速に対処することも可能です。さらに、情報が適切に共有されるとチームメンバー同士の理解が深まり、チームワークも向上するのもメリットです。
3-3.従業員の定着率が上がる
心理的安全性の高い職場では、従業員が「ここで働き続けたい」と感じやすい傾向にあります。安心感を持って働ける環境では、従業員が個人の能力を存分に発揮しやすく、成果を実感できる機会が増え、仕事への満足度も高まります。
さらに、心理的安全性があると、同僚や上司との信頼関係が築きやすくなり、職場の人間関係の質も向上します。これらの要因が相まって、従業員の定着率が向上し、組織としても人材流出のリスクを軽減できるでしょう。また、離職率の低下は、新しい人材の採用コストを削減し、従業員の育成に集中できるメリットもあります。
3-4.イノベーションが生まれやすくなる
心理的安全性が高い職場では、イノベーションが生まれやすくなる点もメリットとして挙げられるでしょう。多様な価値観や視点が尊重され、従業員が新しいアイデアや提案を気兼ねなく発信できる環境は、革新的な発想に至りやすくなります。
たとえば、従業員が日常業務で感じた課題を率直に共有できれば、その解決策をチームメンバー全員で検討する機会が生まれます。また、心理的安全性が高いと、従業員は失敗の可能性を恐れずに挑戦できるため、リスクを伴うプロジェクトや新規事業にも積極的に取り組むことが可能です。これにより、組織全体が変化に対応しやすくなり、競争力や収益性の向上にもつながります。
4.心理的安全性を高める方法
心理的安全性の高い組織風土を醸成する方法はいくつかありますが、代表的なのは以下の5つです。取り入れやすいものから導入し、職場の心理的安全性を高めましょう。
1on1ミーティング | 上司と部下が1対1で行うミーティングのことで、部下の悩みやビジョンを共有する場として有効です。こまめな対話を通じて、相互理解と信頼関係を深められます。 |
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ピアボーナス | 従業員同士が感謝の気持ちを示し合う仕組みです。同僚の貢献に対して報酬を送り合うことで、職場のつながりや一体感が強まります。 |
メンター制度 | 先輩社員が後輩社員をサポートする制度です。上司には話しづらい悩みも気軽に相談できる機会を作ることで、心理的安全性向上に寄与します。 |
OKR | OKR(Objectives and Key Results)とは、目標管理手法の1つであり、個人と組織の目標をリンクさせることで、従業員一人ひとりが自分自身の役割を明確に理解できます。業務の成果を実感しやすく、協力体制も強化されます。 |
マネジメント研修 | 管理職やリーダー層に心理的安全性の重要性を学ばせる研修も効果的です。上層部が適切なコミュニケーション手法を習得すれば、よりよい職場環境を構築しやすくなります。 |
まとめ
心理的安全性は、職場の生産性や創造性、従業員の定着率を高める鍵となります。従業員が安心して意見を述べ、新たなアイデアや改善案を積極的に発信できる職場では、個人の成長だけでなく、チーム全体の効率向上やイノベーションの創出も期待できます。
心理的安全性を高めるには、1on1ミーティングやメンター制度など、取り組みやすい方法を導入し、従業員同士の信頼関係を深めることが重要です。組織全体で継続的に心理的安全性を高める努力を行い、より良い職場環境を築きましょう。