チーミングとは?組織に取り入れる際のポイントと学ぶべき5つの領域
チーミングは、ゲームの分野では「本来は敵同士なのに(ルールに逆らって)チームを組む」という意味です。一方でビジネスの文脈では、「チームワークを最適化し、変化に対応しながら目標達成を目指すポジティブなプロセス」として理解されています。つまり、チーミングという言葉は使われる文脈によって意味が異なります。
当記事では、チーミングとはどのような意味なのかや、チーミングが注目されている背景、組織にチーミングを取り入れるときのポイントなどを分かりやすく解説します。
目次
1.チーミングとはどんな意味?
「チーミング」という言葉は、ビジネスやゲームなどさまざまな分野で用いられる概念です。元々は英語の「team」と「ing」を組み合わせた造語で、チームを組む過程やその実践を指します。
【ビジネスシーンにおける、チーミングの特徴】
- 特に不確実性が高い環境や状況で、効果的なチームワークを構築し継続的に改善していくプロセスを表現している
- 固定化されたチーム構造ではなく、柔軟かつ動的なチーム編成を重視し、メンバー間の連携や役割が常に変化し適応することを特徴としている
- 1人のリーダーに依存するのではなく、全メンバーが参加、意見を交換し、共同でより良いチーム作りを目指すことを重視している
チーミングのコンセプトは、ハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授によって提唱されました。現代のビジネス環境におけるチーム作りの新しい形として注目を集めています。
1-1.チーミングが注目される背景
チーミングが注目される背景として、主に以下の2点があります。
・変動性の高い社会への対応
現代は「VUCA」と呼ばれる、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性が特徴の時代です。このような環境では、技術革新や外部環境の急激な変化に迅速かつ柔軟に対応することが必要です。
従来のピラミッド型組織やトップダウンのアプローチでは、この速度と複雑さに対応するのが難しいため、企業はより動的で適応性の高いチーム運営を求められています。チーミングは、チームが状況や変化に応じて主体的に動き、高いパフォーマンスを維持することを可能にします。チーム内の役割分担や連携の仕方を柔軟に見直し、改善することで、変動性の高い社会に対応する力を高められるでしょう。
・リモートワークの普及とチームワーク構築
新型コロナウイルスの影響でリモートワークが急速に普及し、従業員間の物理的な距離が拡大しました。これにより、従来のように対面でのコミュニケーションに依存することが難しくなり、チームワークの構築や維持が課題となりました。
チーミングは、リモートワークの環境下でもチームとしての意識を高め、効果的なコミュニケーションと協力を促進する方法として注目されています。リモートワークでは、メンバーの情熱や意欲が直接的には感じ取りにくいため、チーミングを通じて積極的に意見交換をして、チームの一体感を保つことが重要です。
2.組織にチーミングを取り入れるときのポイント
企業や組織にチーミングを取り入れるときのポイントは、主に以下の3点です。
- 心理的安全性の高い環境をつくる
- メンバー間で共通の言語や目的をもつ
- プロジェクトの進捗状況を定期的に振り返る
各項目について、なぜ重要なのか、およびメリットなどを詳しく解説します。
2-1.心理的安全性の高い環境をつくる
組織にチーミングを取り入れる際、心理的安全性の高い環境を作ることは非常に重要です。
【心理的安全性とは】
- メンバーが自分の意見や感情を安心して表現できる状態のこと
- エイミー・C・エドモンドソン教授によって提唱され、対人関係においてリスクある行動をとっても、チーム内が安全であるという気持ちがメンバー間で共有される状態を意味する
心理的安全性が確保されたチームでは、若手や新人も「失敗を恐れて発言を控える」といった状況が減少します。メンバーが安心して自分の意見を述べたり、新しいアイデアを提案したり、積極的に挑戦したりできるようになります。これにより、チーム全体の創造性や問題解決能力が高まり、目標達成に向けた取り組みが活発になるでしょう。
2-2.メンバー間で共通の言語や目的をもつ
共通言語とは、情報交換や会話の際に使用される、全メンバーが共有する言葉や概念です。共通言語があり、その言葉の定義がしっかりとチーム内で浸透していると、メンバー間の認識のズレを減らし、コミュニケーションを効率化できます。
また、チーム・組織のミッションやビジョン、バリューや価値観など、仕事をする上での基準や判断軸を共通のものにできると、チームの一体感が増します。共通認識を形成することは、メンバーが組織の方針や戦略に共感し、仕事に対する意欲や情熱が向上するためにも重要です。これにより、組織全体のエンゲージメントが高まり、一致した理解のもとで議論や意見交換が行われるようになります。
2-3.プロジェクトの進捗状況を定期的に振り返る
定期的な振り返りは、プロジェクトの成功に必要な透明性と連帯感を促進する手段の1つです。プロジェクトでミスが発生した場合でも、失敗を非難するのではなく、失敗を分析し、学習の機会として次の成功につなげる体制が重要です。チームメンバーがミスを報告しやすい、オープンで協力的な文化を育成します。
他にも、進捗状況の振り返りには、以下のようなメリットがあります。
- 問題を早期に発見し、迅速な対応を可能にする
- 意思疎通が効率化され、タスクの進行状況が明確になる
- プロジェクトの目標達成に向けたメンバーのモチベーションが向上し、チームの士気が高まる
3.チーミングでは学習する組織をつくることが大事
「学習する組織」とは、個々の従業員が個人やチームとして継続的に変化を生み出し、組織全体が環境に迅速に適応するような、自己組織化する能力をもつ組織のことです。マサチューセッツ工科大学のピーター・センゲ氏が、1990年に著した「最強組織の法則」によって広く知られるようになりました。
学習する組織は、不確実性の高い現代のビジネス環境において、柔軟な適応力と持続的な成長をもたらすためにも重要です。また、従業員が自己成長と組織の発展を同時に目指す文化が確立されると、長期的な視点で組織のパフォーマンスを高めることが可能になります。
3-1.組織が学ぶべき5つの領域
組織が学ぶべき領域として、大きく分けて5つの領域があります。
システム思考 |
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自己実現 |
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メンタルモデル |
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ビジョン |
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チーム学習 |
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これらの学習領域を組織に取り入れることで、変化への適応力、創造性、チームの結束力が向上し、組織全体のパフォーマンスと成長が促進されるでしょう。
まとめ
チーミングを成功させるためには、心理的安全性の高い環境を作ることやメンバー間で共通の言語や目的をもつことが大切です。チーム内での意思疎通がスムーズになり、目標達成に向けた結束力が強まる効果が期待できます。進捗の振り返りと管理を成功させるためにも、チーム内に信頼関係が確立されていることが前提と言えるでしょう。
また、組織が学ぶべき5つの領域には、システム思考・自己実現・メンタルモデル・ビジョン・チーム学習が挙げられます。