2026年の労働基準法改正とは?見送りの理由と検討内容・影響を解説
2026年に予定されていた労働基準法の大幅な見直しは見送りとなりましたが、改正に向けて検討されていた内容を理解することは、今後の労働環境の変化を見通す上で重要です。連続勤務の上限規制、勤務間インターバル制度の義務化、週44時間労働の特例廃止、副業・兼業の労働時間通算ルールの見直し、「つながらない権利」の指針策定など、多岐にわたる項目が検討されていました。
当記事では、2026年労働基準法改正の見送り経緯と背景、検討されていた改正ポイント、企業への影響、今後に備えて取るべき対応とスケジュールを詳しく解説します。将来の法改正に備え、企業として準備を進めましょう。
目次
1. 2026年の労働基準法改正とは?
2026年の労働基準法改正は、当初予定されていた大幅な見直しが見送られることになりました。しかし、改正が検討された背景や目的を理解することで、今後の労働環境の変化を見通すことができます。ここでは、2026年の労働基準法改正の経緯と、改正が検討された背景・目的を分かりやすく解説します。
1-1. 2026年の労働基準法改正は見送りに
労働基準法の大規模な改正は、2025年に労働政策審議会での議論を経て、早ければ2026年の通常国会に法案が提出され、2027年前後の施行が見込まれていました。しかし、2026年1月、政府の方針転換により、当初予定されていた大規模な法改正案の通常国会への提出は見送られることになりました。その結果、改正のスケジュールは当初の想定より後ろ倒しとなる見通しです。
1-2. 労働基準法改正の背景・目的
労働基準法改正が議論されている背景には、テレワーク、副業・兼業、働く時間や場所の多様化が進み、従来の制度とのずれが大きくなっていることがあります。厚生労働省の研究会報告でも、新しい働き方への対応や労働者保護の在り方、労使コミュニケーションの見直しなどが課題として示されました。改正の目的は、現代の働き方に合わせて制度を整えつつ、柔軟性と保護の両立を図ることにあります。
2. 2026年に検討されていた労働基準法改正のポイント
2026年の労働基準法改正では、連続勤務の上限規制や勤務間インターバル制度の義務化、副業・兼業のルール見直しなど、幅広い項目が検討対象でした。ここでは、検討されていた主な改正ポイントを紹介します。
2-1. 連続勤務の上限規制(14日以上の連続勤務の禁止)
連続勤務の上限規制は、休日労働を含めて長期間休みなく働く状態を防ぐための見直しです。研究会報告では、精神的・身体的負担を抑える観点から、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」とする方向性が示されました。現行制度では休日の取り方によって2週間以上の連続勤務も起こり得るため、健康確保のための歯止めを設ける内容です。
出典:厚生労働省「参考資料」
2-2. 勤務間インターバル制度の義務化
勤務間インターバル制度の義務化は、終業から次の始業までに一定の休息時間を確保し、長時間労働による疲労の蓄積を防ぐための見直しです。検討案では、11時間の休息確保を原則としつつ、導入が難しい企業には経過措置や代替措置も含めて、段階的に広げていく方向性が示されています。
出典:厚生労働省「参考資料」
2-3. 法定休日を明確にする義務
法定休日を明確にする義務は、会社が法定休日をあらかじめ定め、労働者に分かる形で示すことを求める見直しです。どの日が法定休日か曖昧だと、休日労働の扱いや割増賃金の計算、振替休日の運用などで混乱が起こりやすくなります。改正では休日ルールを明確にし、健康確保や労務管理の適正化につなげることが想定されています。
出典:厚生労働省「参考資料」
2-4. 週44時間労働の特例制度の廃止
週44時間労働の特例制度の廃止は、一部の小規模事業場に認められてきた法定労働時間の特例を見直すものです。実際には多くの事業場でこの特例が使われておらず、制度としての役割は薄れていると考えられています。今後は業種ごとの労働時間の実態も踏まえつつ、週40時間制への一本化を視野に、撤廃に向けた検討が進められる方向です。
出典:厚生労働省「参考資料」
2-5. 年次有給休暇の賃金算定ルールの明確化
年次有給休暇の賃金算定ルールの明確化は、有休取得時に支払う賃金の計算方法を分かりやすく整理するための見直しです。現行制度では平均賃金や通常賃金など複数の考え方があり、企業や労働者にとって分かりにくい場合があります。改正では、賃金算定の基準をより明確にし、有給休暇を取得しやすい環境づくりにつなげることが検討されています。
出典:厚生労働省「参考資料」
2-6. 時間単位で取得できる年次有給休暇の拡大
時間単位で取得できる年次有給休暇の拡大は、通院や育児、介護などに合わせて有休を使いやすくするための論点です。一方で、年休は心身の疲労回復を目的とする制度でもあるため、現時点では上限日数を直ちに増やす必要性は高くないとされており、今後は柔軟な働き方とのバランスも踏まえて慎重に検討が進められています。
出典:厚生労働省「参考資料」
2-7. 副業・兼業の労働時間通算ルールの見直し
副業・兼業の労働時間通算ルールの見直しでは、労働者の健康確保のための労働時間通算は維持しつつ、割増賃金の計算方法を見直す方向が検討されています。現行制度では複数の勤務先の労働時間を通算して割増賃金を計算する必要があり、企業側の管理負担が課題となっています。改正では通算の考え方を整理し、副業・兼業を行いやすい制度へ見直すことが議論されています。
出典:厚生労働省「参考資料」
2-8. 「つながらない権利」の指針策定
「つながらない権利」の指針策定は、勤務時間外のメールやチャット、電話への対応範囲を社内で明確にし、私生活への過度な介入を防ぐための考え方です。研究会報告では、直ちに一律の法規制を設けるのではなく、まずはガイドライン策定などを通じて、労使で連絡ルールや許容範囲を話し合いやすくする方向性が示されました。
出典:厚生労働省「参考資料」
3. 2026年以降の労働基準法改正による企業への影響は?
2026年3月時点では通常国会への提出は見送られていますが、研究会や審議会で示された論点が将来法改正に反映されれば、企業実務への影響は小さくありません。考えられる企業への影響は以下の通りです。
- 人件費の増加
連続勤務規制や勤務間インターバルが強化されると、シフト再編や増員が必要になり、残業代や代替要員コストが増える可能性があります。 - 勤怠管理の複雑化
副業・兼業の通算ルール見直しや休日管理の明確化が進むと、勤怠・給与計算システムの改修負担が高まりやすくなります。 - 就業規則や労使協定の見直し
法定休日の特定、勤務間インターバル、時間外連絡の社内ルールなどを反映するため、就業規則や運用基準の再整備が必要になる見込みです。 - コンプライアンス対応の強化
新ルールに対応できなければ、未払い賃金や休日管理不備などの労務リスクが高まり、行政対応や従業員対応の負担も増えます。
4. 2026年以降の労働基準法改正に備えて企業が取るべき対応とスケジュール
労働基準法改正は2026年時点で見送りとなりましたが、今後再び議論が進む可能性を踏まえ、企業は段階的に準備を進めておくことが重要です。主な対応の流れを整理すると次の通りです。
| 手順 | 対応内容 |
|---|---|
| 1. 現状分析 | まずは自社の労務管理の実態を確認します。連続勤務日数、休日管理、勤務間インターバル、副業・兼業者の労働時間管理などを整理し、将来の法改正で影響を受けるポイントを洗い出します。 |
| 2. 制度設計 | 分析結果を基に、就業規則や副業規程、休日管理ルールなどの見直し方針を検討します。人事部門だけでなく現場管理職や法務部門と連携し、実務に適した制度設計を進めます。 |
| 3. システム整備 | 勤怠管理や給与計算システムの対応も重要です。連続勤務やインターバル時間の管理、副業の労働時間把握などを自動化できる仕組みを検討します。 |
| 4. 周知と運用定着 | 制度変更後は従業員や管理職への説明を行い、社内ルールとして定着させます。運用開始後も定期的にチェックを行い、問題点を改善する体制を整えることが重要です。 |
まとめ
2026年の労働基準法改正は見送りとなりましたが、連続勤務の上限規制、勤務間インターバル制度の義務化、法定休日の明確化、週44時間労働の特例廃止、副業・兼業のルール見直し、「つながらない権利」の指針策定など、多岐にわたる項目が検討されていました。
将来的に法改正が実現すれば、人件費の増加、勤怠管理の複雑化、就業規則の見直し、コンプライアンス対応の強化など、企業への影響は小さくありません。今から自社の労務管理の実態を分析し、制度設計やシステム整備を段階的に進めることで、将来の法改正にスムーズに対応できます。早めの準備を進め、労務リスクを最小限に抑えましょう。




