【2025年施行】雇用保険改正のポイントをわかりやすく解説
2025年4月から改正雇用保険法が施行され、労働者の再就職支援や育児支援、教育訓練支援に関する給付制度が見直されます。今回の改正では、自己都合離職に対する給付制限の緩和や、育児休業給付の拡充、新たな時短勤務給付の創設など、企業の人事・労務に直接影響する内容が多数含まれています。
当記事では、雇用保険制度改正の主要6ポイントを整理し、わかりやすく解説します。雇用保険制度の変更内容を適切に把握することは、雇用支援や人材育成の面でも重要です。制度対応の見落としを防ぐためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
1.雇用保険制度とは?
雇用保険制度とは、労働者の失業や育児休業などによる収入減少時に給付を行い、生活の安定と再就職の支援を図る公的制度です。失業等給付や育児休業給付の支給に加え、雇用の安定や能力開発などを目的とした事業も実施されています。
政府が管掌する強制保険で、原則として労働者を雇用するすべての事業所に適用されます。被保険者となるのは、所定労働時間が週20時間以上で31日以上の雇用見込みがある労働者です。雇用保険の加入手続きは事業主が行います。
2.【2025年:雇用保険改正ポイント1】自己都合離職者に関する給付の見直し
2025年4月1日より、自己都合離職者に対する雇用保険の給付制限が見直されます。これまで自己都合退職者の場合、原則として失業保険の受給までに2か月間(一定条件では3か月)の給付制限が設けられていました。
しかし、改正後は離職期間中または離職日前1年以内に、自ら就職に役立つ教育訓練を受けた場合、給付制限が解除されます。また、原則の給付制限期間は1か月に短縮されますが、5年以内に3回以上の自己都合離職がある場合は3か月のまま据え置かれます。これにより、再就職支援の実効性が高まり、労働者の不安軽減が期待されるでしょう。
3.【2025年:雇用保険改正ポイント2】教育訓練支援関連の見直し
2025年の雇用保険制度の改正では、労働者の学び直しやスキル向上を後押しするため、教育訓練支援制度が大きく見直されます。ここからは、改正内容のポイントをわかりやすく説明します。
3-1.教育訓練休暇給付金の創設
2025年10月1日から、雇用保険被保険者が無給の教育訓練休暇を取得した際の生活支援として「教育訓練休暇給付金」が新設されます。これは、主体的にスキルを高めようとする労働者が、生活費への不安を抱えず訓練に専念できる環境を整えることが目的です。
対象は被保険者期間が5年以上の労働者で、支給額は離職時に受け取れる基本手当と同等です。給付日数は、加入期間に応じて90日・120日・150日と分かれています。なお、雇用保険未加入の方を対象とした教育訓練費用と生活費の融資制度も別途設けられる予定です。
3-2.教育訓練給付率の見直し・雇止め特例を延長
2025年4月1日から、雇止めによる離職者に対する基本手当の給付日数の特例や、地域延長給付が2年間継続されます。本来、雇止めによる離職者の基本手当の給付日数は90日~150日ですが、特例として90日~330日に延長されています。
また、45歳未満の離職者が専門実践教育訓練を受講する際に支給される「教育訓練支援給付金」については、給付率が従来の80%から60%へと見直され、2年間延長されます。加えて、介護休業給付に対する国庫負担の軽減措置も2年間継続されることになりました。これらの見直しは、支援の継続と制度の持続可能性を両立させることを目的としています。
4.【2025年:雇用保険改正ポイント3】育児関連給付の拡充
2025年の雇用保険制度の改正では、育児と就業の両立を支援するため、育児休業中や短時間勤務中の給付制度が大幅に拡充されます。以下で具体的な変更点をわかりやすく解説します。
4-1.育児休業給付の給付率引上げ
2025年4月1日より、育児休業給付の給付率が一部引き上げられます。従来、育児休業給付金は育児休業の開始から180日までは賃金の67%、それ以降は50%でしたが、改正後は「共働き・共育て」を促進する観点から最大80%(手取りで実質10割相当)に引き上げられます。
対象者となるのは、男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に、被保険者とその配偶者がともに14日以上の育児休業を取得した場合で、最大28日間です。配偶者が専業主婦(夫)やひとり親家庭などの場合も、要件に応じて給付率引上げの対象となります。なお、財源には子ども・子育て支援金が活用されます。
4-2.育児時短就業給付の創設
2025年4月1日から、2歳未満の子を養育するために短時間勤務を選択した労働者を対象とした「育児時短就業給付」が新たに創設されます。育児休業等給付制度と並び、育児と就業の両立を支援するために導入されるもので、時短勤務による賃金減少の補填が目的です。
給付額は時短勤務中に支払われた賃金の10%とされ、休業よりも時短勤務、時短勤務よりも通常の勤務を促進する制度設計となっています。財源は、子ども・子育て支援金です。これにより、育児期の労働者が柔軟な働き方を選びやすくなり、キャリア形成と育児を両立しやすくなることが期待されます。
4-3.出生後休業支援給付の創設
「共働き・共育て」の推進を目的に、2025年4月1日から「出生後休業支援給付」が新設されます。出生後休業支援給付は、子の出生直後に両親が積極的に育児休業を取得できるよう経済的な支援を強化する制度です。
男性は出生後8週間以内、女性は産後休業終了後8週間以内に、それぞれ14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間にわたり賃金の13%を上乗せして支給されます。これにより、既存の育児休業給付と合わせて給付率が80%(手取りで実質10割相当)となり、実質的な収入の減少を補うことが可能です。配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親家庭の場合も対象となります。財源には子ども・子育て支援金が充てられます。
5.【2025年:雇用保険改正ポイント4】育児休業給付を支える財政基盤の強化
育児休業給付の支給額は育児休業を取得する労働者の増加に伴い年々拡大しており、雇用保険制度を安定的に運用するには財源の強化が急務です。そのため、今回の雇用保険法改正では2024年度から国庫負担割合を暫定的な80分の1から本則の8分の1へと引き上げ、国の財政支援を強化します。
また、2025年度からは雇用保険料率の上限を0.4%から0.5%に引き上げ、実際の料率は財政状況に応じて弾力的に調整されます。これにより、増加が見込まれる男性の育休取得にも対応できる持続可能な給付制度が整備され、育児と就業の両立を支える基盤の強化が改正法により図られます。
6.【2025年:雇用保険改正ポイント5】就業促進手当の見直し
2025年4月1日から、早期再就職を促すための就業促進手当に関する制度が見直されます。これまで、安定した職業以外に就いた際に支給されていた「就業手当」は、実績の少なさなどを踏まえて廃止されることになりました。
また、再就職後の賃金が離職前より下がった場合に支給される「就業促進定着手当」については、上限額が支給残日数の20%に引き下げられます。今後は、1年以上の雇用が見込まれる職場への早期再就職を対象とした「再就職手当」への一本化が進められ、制度の効率化と再就職支援の重点化が図られます。
まとめ
2025年の雇用保険制度の改正は、企業の人材戦略・労務管理に直結する内容が多数盛り込まれています。再就職支援制度の再編により支援対象や給付の条件が変わるほか、育児や学び直しへの支援強化は、多様な働き方の実現に向けた環境整備を促すものです。
特に、育児関連の給付拡充や教育訓練支援の拡充は、若手人材の定着率向上やスキルアップ施策の推進にもつながります。制度をうまく活用することで、従業員満足度の向上と企業価値の強化が期待できるでしょう。経営者や労務担当者の方は、改正内容を正確に把握し、自社の就業規則や福利厚生制度の見直しに当記事を役立ててください。