アジャイル思考とは?デザイン思考との関係性やメリット・デメリット
アジャイル思考とは、迅速かつ柔軟に変化に対応する思考方法で、ソフトウェア開発に限らず、ビジネスや日常生活にも広く応用されています。
アジャイル思考を取り入れると、より効率的かつ効果的なプロジェクト管理を実現でき、急速に変化する市場や顧客のニーズに素早く対応することが可能です。
当記事では、アジャイル思考の基本的な概念から、デザイン思考との関係性、具体的な手法、さらにはそのメリットとデメリットまで詳しく解説します。
目次
1.アジャイル思考とは
アジャイル思考とは、迅速かつ柔軟に変化に対応する思考方法です。「アジャイル(agile)」には、「素早い」や「機敏な」といった意味があります。
アジャイル思考は、ソフトウェア開発手法である「アジャイル開発」から派生しました。アジャイル開発とは、小さな単位で実装とテストを繰り返しながら進める手法です。従来の開発手法とは異なり、開発サイクルを短縮しつつ、変化する市場や顧客のニーズへの素早い対応を目的としています。
アジャイル思考では、短期間でPDCAサイクルを繰り返し、早期のフィードバックで迅速に改善・適応することが重要です。技術の進化と市場の変化が激しい現代において、アジャイル思考はビジネスや日常生活など、さまざまな場面で活用されています。
1-1.アジャイル思考とデザイン思考の関係性
デザイン思考とは、ユーザーの行動を観察して潜在的なニーズを理解し、新しい価値を生み出すためのアイデアを創出する思考法です。デザイン思考のプロセスは、「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイピング」「テスト」の5つのステップから構成されます。
一方、アジャイル思考は、デザイン思考によって生み出されたアイデアを迅速に実行し、フィードバックを得て改善を繰り返す考え方です。アジャイル思考では、変化に対する柔軟な対応と迅速な実行が重視されます。
デザイン思考とアジャイル思考は、互いに補完し合う関係性です。ユーザーニーズへの最適解を見つけるには、デザイン思考で発見したアイデアをアジャイル思考で素早く実行し、反復的なプロセスで改善を重ねる必要があります。デザイン思考とアジャイル思考の相乗効果は、企業や組織のDX推進や新規事業開発において非常に重要です。
1-2.ウォータフォールとの違い
ウォーターフォール開発は、システム開発を計画で定められた順序に従って進めるのに対し、アジャイル開発はシステムの機能ごとに分割して進める点で異なります。
ウォーターフォール開発では、要件定義・設計・開発・テスト・リリースを順に行い、各工程を完了しない限り次に進めません。計画の全貌が確定してから開発が始まるため、予算や納期を管理しやすいのがメリットです。しかし、仕様変更や追加要件への対応が難しく、途中での変更には大きなコストがかかります。
一方、アジャイル開発は優先順位が高いものから順に開発し、途中で得られるフィードバックをもとに随時改善し、問題解決する開発方法です。仕様変更や追加要件を開発工程の中に組み込みやすく、リリース時に要件の不足があっても、後からブラッシュアップで対応が可能です。
2.アジャイル思考の具体的な手法
アジャイル思考の具体的な手法としては、以下の3つが挙げられます。
・エクストリームプログラミング(XP)
エンジニアがペアを組んでコーディングする開発手法です。互いにコードレビューを行いながら進めるため、エラーを早期に発見しやすく、仕様変更に柔軟に対応できます。短いリリースサイクルと頻繁なフィードバックを通じて、プロジェクトの進行をスムーズに保てるのが、XPの特徴です。ただし、エンジニアのスキルやペアの相性によっては業務効率が低下する場合もあります。
・スクラム
チーム単位で開発を進めるフレームワークで、アジャイル開発の中でも特に有名です。チーム全体で役割を分担し、スプリントと呼ばれる短期間の開発サイクルを繰り返す点が特徴です。スクラムマスターがチームの調整役を務め、プロダクトオーナーが成果物の責任を持ち、開発チームが実際の開発を担います。透明性・検査・適応という3つの柱をもとに進行し、チームメンバーのこまめなコミュニケーションを重視します。
・ユーザー機能駆動開発(FDD)
ユーザーが求める機能価値を重視する開発手法です。ユーザーやクライアントとのミーティングを通じて必要な機能を明確にし、その機能ごとに設計・開発・修正を行います。開発の方向性がぶれにくく、ユーザーのニーズに即した機能を効果的に提供できる点が特徴です。
各手法の強みと、プロジェクトの性質やチームの特性を考慮した選択が、プロジェクトの成功につながります。
3.アジャイル思考のメリット
アジャイル思考のメリットは多岐にわたりますが、特に柔軟かつ迅速に対応できること、顧客のニーズに応えやすいことが代表的です。
以下では、アジャイル思考のメリットを2つ解説します。
3-1.柔軟かつ迅速に対応できる
アジャイル思考の最大のメリットは、柔軟性と迅速な対応力により、市場の変化に合わせた素早い調整が可能な点にあります。アジャイル開発は、短いサイクルで実装とテストを繰り返し、工程ごとの小さな単位で開発を進める手法です。これにより、途中で製品仕様の変更や不具合が発生した場合でも素早く現場が対応できます。
ウォーターフォール開発では、大規模な設計変更が必要な場合は手戻りが大きく、多くの時間とコストがかかります。しかし、アジャイル開発ならば少ない工数で対応可能です。結果として、開発スピードが向上し、プロジェクトの遅延を最小限に抑えられるケースが少なくありません。
3-2.顧客のニーズに応えやすい
アジャイル思考は、顧客のニーズに応えやすい点も大きなメリットです。アジャイル思考では、開発プロセスの中で定期的にユーザーからのフィードバックを受け取り、その意見をもとに次の開発サイクルに反映させます。こまめに要求を確認しながら進めることで、情報のズレや見落としを防ぎ、顧客の要望を的確に捉えた製品やサービスの提供が可能です。
また、ユーザーの期待に応じて仕様変更や追加機能を柔軟に取り入れられるため、最終的に高い顧客満足度を実現できる可能性が高まります。顧客とのコミュニケーション重視により、一層実用的でニーズに合った成果物を提供できるのが、アジャイル思考の大きなメリットと言えるでしょう。
4.アジャイル思考のデメリット
アジャイル思考は、変化に強く迅速な対応が可能な一方で、プロジェクト管理においていくつかの課題が生じます。特にスケジュール管理の難しさや開発の方向性がぶれやすい点はデメリットとして挙げられるでしょう。
以下では、アジャイル思考のデメリットを2つ解説します。
4-1.スケジュール管理が難しい
アジャイル思考では、仕様変更に柔軟に対応できる点がメリットですが、これが反対にデメリットとなる場合もあります。頻繁に仕様変更が発生すると、全体のスケジュールが延びやすくなるためです。
小さな単位で開発を進めることから、個々のスプリントでは進捗を把握しやすいものの、プロジェクト全体の進行状況を把握するのは困難です。結果として、予定したリリース日が守れなかったり、予算オーバーになったりするケースが珍しくありません。こうしたスケジュール管理の難しさを克服するには、綿密な計画と適切な進捗管理が不可欠です。
4-2.開発の方向性がぶれやすい
アジャイル開発では、小さな単位での仕様変更が容易なため、全体の方向性がぶれやすくなるのもデメリットとして挙げられるでしょう。小さな単位での開発とフィードバックの繰り返しにより、全体のビジョンや目的を見失いやすくなることが要因です。
仕様変更を繰り返した結果、当初の開発計画や戦略目標から大きく逸れてしまい、最終的に当初のコンセプトとは異なる製品となる場合は少なくありません。また、ユーザーやクライアントからの要望を受け入れすぎると、開発期間が延びたりコストが増加したりする恐れがあるのもデメリットです。
まとめ
アジャイル思考は、迅速かつ柔軟に変化に対応する思考方法です。市場の変化や顧客のニーズに素早く応じることができ、ソフトウェア開発だけでなく、ビジネスや日常生活にも幅広く応用されています。
デザイン思考と相互に補完し合いながら、ユーザーニーズに適した製品やサービスを提供するためのアプローチとしても有効です。しかし、スケジュール管理の難しさや方向性のぶれなどの課題もあり、これらを克服するには綿密な計画と進捗管理が不可欠です。
アジャイル思考のメリットとデメリットを理解し適切に活用すれば、プロジェクトの成功に近づくことができるでしょう。