企業ができる採用難への対策5つ|採用難が起こる理由とは?
近年では商品・サービスへの需要があるにもかかわらず人手が足りず、倒産する企業も見られます。人手不足が社会問題化する時代においても淘汰されず、企業の安定経営を図るためには早急な採用難への対策が不可欠です。
当記事では、人手不足の悩みを抱える経営者や人事担当者に向けて、採用難の原因と対策を解説します。新卒・中途採用において優秀な人材を安定的に確保し、企業の利益につなげる採用ノウハウを知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.企業の採用難はなぜ起こる?よくある3つの理由
採用難とは、求職者側の売り手市場になっており、採用活動を行っても予定した人数の人材確保が難しい状態のことです。
建設業、飲食サービス業、医療・福祉業界は特に人手不足が深刻で、採用難に陥りやすい傾向があります。企業の規模に関して言うと、大手企業よりも中小企業で採用難が起こりやすく、安定的な人材確保を図るためには、十分な対策が必要です。
企業の採用難が起こる理由は、大きく分けて3つあります。
1-1.労働人口の減少
日本では少子高齢化の影響で、顕著な人口減少が起こっています。さらに、働き盛りの年齢層にあたる労働力人口減少は日本の深刻な課題です。2020年時点で6,868万人の労働力人口が、2040年には6,195万人まで減少するとも言われます。
出典:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果の概要」
労働力人口減少は企業間の人材確保競争を激化させて、採用難を引き起こします。労働力人口減少を危惧した政府は外国人労働者の受け入れなどの対策を打ち出したものの、人手不足の問題が解決されたとは言い難い状況です。
1-2.新卒3年以内における離職率の増加
大卒の新入社員のうち約3割は、3年以内に離職しています。以下は、2020年時点において特に3年以内離職率が高い産業・業種です。
- 宿泊業・飲食サービス業
- 生活関連サービス業・娯楽業
- 教育・学習支援業
- 医療、福祉
- 小売業
近年の若手は、「多様な働き方が認められる企業に勤務したい」と考える傾向があるとも言われます。現代社会の流れに適した労働環境を提供できない企業では、他社への人材流出、採用難が起こりがちです。
1-3.企業と求職者におけるミスマッチの発生
企業と求職者におけるスキル・待遇面のミスマッチによっても、採用難が起こります。企業と求職者におけるミスマッチを発生させる主な要因は、以下の通りです。
- 企業の求めるスキルが高度専門化している
- 求職者の希望賃金形態が変化している
グローバル化が進む時代において多くの企業は、特定分野の専門性やマネジメント能力が高い人材の確保を狙います。求職者数が十分でも企業の求めるスキルに満たない人が多ければ、採用には至りません。
また、多くの企業が求めるスキルを備えた人材は、成果報酬スタイルの賃金形態を好む傾向があります。そのため、職能給(従業員の等級に応じて賃金を決定する仕組み)や年功序列に固執する企業は求めるスキルを備えた人材を確保しにくく、人手不足に悩みがちです。
2.【新卒・中途共通】企業が採用難に対してできる対策5選
企業の採用難は新卒・中途のいずれにおいても、起こっている問題です。新卒・中途採用における採用難を解消するためにはポイントを押さえた対策を早急に検討し、実施する必要があります。
以下では、採用難に対してできるさまざまな対策の中から主要な案を紹介します。
2-1.採用方法の見直し
求人を掲載して待つスタイルの採用活動しか行っていない企業はアプローチ方法を見直し、他の手法も試しましょう。以下は、近年注目されている採用方法の代表例を示します。
ダイレクトソーシング | 企業の人事担当者から求職者にアプローチする方法 |
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SNS採用 | 企業のSNSアカウントを運用し、情報提供や求職者へのアプローチを行う方法 |
リファラル採用 | 従業員などに人材を紹介してもらう採用方法 |
ヘッドハンティング | ヘッドハンターのサポートを受けて、求職者にアプローチする方法 |
新卒採用では上記の他、合同説明会への参加やミートアップ(ゲームや食事を通じて、学生と従業員を交流させる方法)を通じて企業の魅力をアピールする方法も検討できます。
2-2.採用幅の拡大
アプローチ方法を変更せずに採用難を解消するためには、採用条件を見直しましょう。たとえば、都心部の企業の新卒採用では、地方学生にも目を向ける対策が選択肢となります。中途採用では、シニア層や主婦層の採用を検討してもよいでしょう。
ただし、シニア層や主婦層の採用市場は既に激化しつつある状態です。シニア層や主婦層の効率的な採用を図るためには、他社との差別化戦略として、福利厚生制度や勤務形態の見直しが必要となるケースもあります。
2-3.従業員の待遇向上
従業員満足度は、求職者が企業の価値を判断する際の重要な資料です。採用難を解消するためには、福利厚生制度・雇用形態などを見直し、従業員の待遇・満足度の向上を図りましょう。
以下は、従業員満足度の向上につながりやすい福利厚生制度の例です。
- 慶弔、災害見舞金
- 特別休暇制度
- 自己啓発支援制度
- 社員食堂
- 住宅手当、家賃補助
雇用形態を見直す場合は、契約社員を正社員登用する対策が一案です。契約社員から正社員を目指せる仕組みを構築する方法もよいでしょう。
2-4.インターンシップの導入
インターンシップとは、求職者に職場を体験してもらい、企業や仕事の魅力を伝える活動です。中小企業がインターンシップを導入すると、企業の存在を多くの人に企業を認知してもらうことができ、応募につなげるチャンスを得られます。
インターンシップを導入するその他のメリットは、以下の通りです。
- 企業文化や仕事内容とのミスマッチによる早期離職を防止できる
- 理想の人物像に近い求職者の採用につながる
ベンチャー企業では新卒教育の一環として、インターンシップを活用することもあります。インターンシップで業務内容の一部を経験させたり企業理念を伝えたりすることで、入社後の教育期間の短縮が可能です。
2-5.多様な働き方の導入
現代的な考えを持つ若手を採用するのであれば、多様な働き方を導入する対策も検討しましょう。以下は、導入を検討できる多様な働き方の代表例です。
フレックスタイム制 | 1か月単位で所定労働時間を定め、従業員自身が始業・就業時刻を決定できる働き方 |
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リモートワーク(テレワーク) | ICT技術を活用し、オフィス外で仕事を行う働き方 |
時短勤務 | 1日あたりの所定労働時間を6時間程度にする働き方 |
多様な働き方の導入は、従業員の労働環境を改善するための対策としても機能します。結果として従業員満足度が向上すれば、企業力アップにつながるでしょう。
3.採用難の対策は早めに取り組むことが重要
人材採用には、採用担当者の人件費・求人サイトの採用情報掲載費用・人材紹介会社への依頼費用など、さまざまなコストが発生します。採用難が長引くほどコストの負担は重くなるため、早めの対策がおすすめです。
そもそも求職者や従業員のことを思いやり、ニーズに即した労働条件や環境を整備できていれば、採用難が起こる可能性は低いと言えます。従業員の働きやすさを向上させて時代のニーズに即した経営を行うためにも、早めの対策が不可欠です。
また、採用難への対策が遅れるほど、現場で働く従業員一人ひとりに負担を掛けます。対策が遅れて長時間労働がまんえいする状態に陥ると、人材流出につながる可能性もあるでしょう。中小企業は特に人手不足で従業員に大きな負担を掛けやすいため、早めの採用難対策がおすすめです。
まとめ
採用難は、労働力人口の減少・企業と求職者のさまざまなミスマッチが原因で起こります。採用難を解消するためには、採用方法や採用基準を見直す対策が選択肢です。また、福利厚生制度を充実させたり、多様な働き方を導入したりすることにより従業員満足度を向上させると、企業力が高まるでしょう。
採用難を放置することは、企業にとってのリスクと言えます。採用難を放置せず、早めに対策することで、企業価値の維持・向上と労働環境の改善につなげましょう。