【シニア世代と働き方】シニア世代の重要性|活用する4つのポイント
シニア人材を活用するにあたって「これまでの経験やスキルを活かして働いてほしい」「技術を若手に残していってほしい」といった希望を抱く人も多いでしょう。一方で、モチベーションの低さ・高齢によるパフォーマンスの低さ、若手との関係性構築が難しいといった課題があります。
当記事では、シニア世代の現状とその重要性、また活用する際に気を付けたいポイントと改善策を解説します。シニア人材雇用を考えている方や、またシニア人材についての知識を得たいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.シニア世代の現状とは?シニア人材の重要性も
少子高齢化が進むに連れ、生産年齢人口(15~64歳)も同様に減少しています。以下は、厚生労働省の統計を抜粋した表です。
生産年齢人口 | 65歳以上人口 | |
---|---|---|
2019年 | 59.5% | 28.4% |
2065年(見込み) | 51.4% | 38.4% |
生産年齢人口の減少・65歳以上人口の増加が見込まれる中、日本の産業を支えるために重要なのが「シニア人材の活用」です。令和3年4月には、厚生労働省の高齢者雇用安定法の改正があり、65〜70歳までの就業機会確保の努力義務が設けられました。
実際に、シニア世代の就業意欲は高い傾向です。内閣府の調査によれば、現在収入を得ている60歳以上において「70歳くらいまで、もしくはそれ以上(働きたいと考えている)」と答えた方は、約9割を占めました。
シニア人材は、長きにわたる職務経験で培ったコミュニケーション力や技術、豊かなネットワークと知見が魅力です。SDGsの考え方も広まっている今、ビジネスを長期的に持続・加速させていくためには、シニア人材の雇用と活用は必要不可欠と言えるでしょう。
2.シニア人材を活用する際のよくある課題3選
シニア人材の雇用には、これまでの専門性や人脈を後世に継いでいくことや、後進育成といったメリットがあります。一方で、実際にシニア人材を雇用した企業では、シニア人材の活用に課題やデメリットを感じる企業も少なくないでしょう。
ここでは、シニア人材の活用においてよくある課題を3つ紹介します。
2-1.本人のモチベーション維持が難しい
本人のモチベーションの低下の要因には、昇進や昇給、年収や権限などの条件がこれまでと同じようにいかないという理由が挙げられます。今以上の昇進や昇給も簡単にいかない、もしくは条件が下がってしまうことで、仕事へのやりがいや意義をうまく見つけられず、モチベーションが低下してしまう方は少なくないようです。シニア人材とのキャリア面談を実施し、これまでの業務や条件との違いについて説明を行い、シニア人材側に納得してもらうことが重要です。
2-2.処遇・業務内容などを決めることが難しい
シニア人材が歩んできたキャリアは、人により千差万別です。例えば、同じ年齢であっても働いて10年の方と、1年の方ではできる業務量が違うように、シニア人材でも培ってきたスキルの程度はそれぞれ異なります。そのため、処遇・業務内容を一律に決めることが難しいという課題があります。
また、シニア人材には体力や健康への配慮も必要です。これまでと同じ労働環境だと、人によっては体力的に厳しいと感じる方もいるでしょう。スキルを活かしながら、無理なく働いてもらえるように、労働条件を見直す必要もあります。
2-3.若手との関係性構築が難しい
「培ったスキルを若手に託していってほしい」という願いは、シニア人材に期待することの1つでしょう。
しかし、シニア人材の熱心すぎる教育に若手が参ってしまう恐れもあります。そのため、企業全体のシニア人材の人数バランスにも注意が必要です。社内にシニア世代が多くなると、若手の肩身が狭くなることも考えられます。
さらに、高齢になれば生産性がどうしても落ちてしまいやすいです。若手がシニア人材の作業ペースに合わせてしまい、結果的に全体の生産性も低下してしまう恐れもあります。「何の仕事をしているかわからない」といったシニア人材の仕事が不透明であることも、若手とシニア人材の関係性に障害をもたらしますので、注意しましょう。それぞれの仕事内容を明確化し、お互いに悪影響を及ぼさない対策を行うことが重要です。
3.シニア人材を活用するポイント4つ
最初は「定年しても働きたい」という意欲があったシニア人材の方でも、第一線から退いたことで会社からの期待を失ったように感じる方もいます。
シニア人材のモチベーションを上げるための一つの案としては、1on1ミーティングなどの実施が挙げられます。シニア人材の方の存在意義や実際の活躍、周囲から必要とされているという声などを伝えることで、シニア人材の方も自己肯定感が高まりモチベーション向上が期待できるでしょう。
以下では、シニア人材を活用する際に押さえたいポイントを4つご紹介いたします。
3-1.シニア世代が望む働き方を把握する
一言に働くといっても正社員や契約社員、パート、アルバイトと雇用形態はさまざまです。雇用形態によって行う業務や責任感、労働時間も違うでしょう。これまでのキャリアを活かしたい人、この機会に何か別の業務をしてみたい人など、できるだけ本人の希望や適性、専門性を考慮し、働き方を選択できる環境づくりが必要です。お互いが納得する業務にあたることで、本人のモチベーション向上や会社に好影響を与えるようなパフォーマンスにつながるでしょう。
3-2.報酬体系を公正にする
シニア人材一人ひとりの能力や仕事に対しての報酬は、不公平感が生まれないよう適切かつ明確に決めましょう。経営状況から人件費の負担を懸念する場合は、「シニア社員は賞与・定期昇給なし」、その上で「慶弔規定や休職・休業などの福利厚生はシニア人材になっても変化なし」という制度も選択肢の一つです。すっきりとした報酬体系を設計し、シニア人材だけでなく社内全体が、納得感を持てるような制度を構築しましょう。
3-3.年金・保険制度などの詳細を把握する
シニア人材を活用する上で、年金や保険制度の詳細を知っておくことも重要です。また制度は場合により改正されるので、改正された内容についても調べておくことは欠かせません。例えば、令和4年(2022年)4月より年金制度が改正されました。60〜64歳以下の方はこれまで、給与と受給する年金の合計額が28万を超えると、その超過分の半額が年金から減額される仕組みとなっていました。しかし、今回の改正により支給停止になる基準が47万に変わり、以前よりも収入が増えるかもしれない、働きたいシニア世代によって有利な改正となりました。
改正によってこれまで「減額されるなら働くのはやめておこう」としていた、働きたいシニア世代の働き始めるきっかけにもなります。今後シニア人材を活用していく場合、年金と保険制度の詳細を理解することは、切っても切り離せない重要なポイントとなるでしょう。
3-4.シニア人材が使いやすいツールを導入する
昔はなかったパソコンやタブレット端末、スマホといった新しいツールへの理解や経験が若い世代と比較して浅いことがシニア世代の弱みです。年齢とともに忘れやすくなる方も多いので、新しいことへの挑戦に戸惑い・尻込みをしてしまったり、適応するまで時間がかかったりすることも珍しくありません。使いやすいツールやマニュアルを用意することで、業務への順応に早く慣れることができるでしょう。また慣れるまでの期間は「焦らずゆっくりで大丈夫」と受け入れる周囲のサポートも必要です。
まとめ
高年齢者雇用安定法が改正されたことにより、70歳までの定年引き上げや、定年制の廃止など、高年齢者が活躍できる環境整備が整ってきています。これまでの経験を生かした専門性の発揮、若手に技術やスキルを伝えていく後進育成、取引先などの人脈伝承といったメリットは、シニア世代だからこその魅力です。
シニア人材を活用していくためにも、まずは被雇用者の方としっかりと面談を行いましょう。その上で、人事制度などを明確に整備したり、シニア人材が思い切り輝けるような就業環境を整えたりしてあげることが大切です。