採用DXとは?採用システムをDXにするメリット・進め方の詳細など
スマホやパソコンを介したインターネットの活用が主流となった近年、企業ではあらゆる分野でIT化・DX化が進んでいます。DX化とは、「アナログからデジタルに置き換えることはもちろん、その先の全体的な経営やビジネスモデルの変革・再構築をする」ということです。
そしてDX化は、企業の採用市場にも浸透し始めました。当記事では、採用DXの概要・注目されている理由から、採用システムをDX化するメリット、進め方まで徹底的に解説します。
目次
1.採用DXとは?
採用DXを理解するうえで、「DXとは具体的にどういうことなのか」を理解することは欠かせません。そもそもDXとは、「デジタルトランスフォーメーション」の略称であり、IT化の先の経営・ビジネスモデルの変革を指します。
経済産業省では、DXについて下記のように定義付けています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
引用:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0」
DXではデータやデジタル技術の活用が主となることから、IT化と混同して考える人も少なくありません。しかし、IT化は何らかの変化を目的にデジタル化を進めるものであり、DX化はデジタル化を手段に、経営やビジネスモデルの変革を進めるものです。このように双方はそれぞれ厳密な違いがあることを覚えておきましょう。
そして、採用DXは採用業務のDX化、つまり「データとデジタル技術を活用(デジタル化含む)して、優秀な人材を確保すること」を指します。DXの主な対象となる採用プロセスは、認知から応募、そして選考・内定から入社までの全領域です。すべての採用領域でDXを実施し、CX(候補者体験)とEX(従業員体験)を向上させます。
1-1.採用DXが注目されている理由2つ
採用DXが注目されていることには、下記2つの理由があります。
〇採用活動のオンライン化が進んでいるため
IT・デジタル技術の進化に伴い、企業における各活動のオンライン化が進みました。加えて2020年から流行した新型コロナウイルス感染症の影響により、オンライン化はさらに加速します。採用活動においても例外ではなく、オンライン化における新たな訴求法も重要となりました。
〇口コミの重要性が高まっているため
SNS利用が当然となった近年、「リアルな人の声」が分かる口コミの重要性が高まっています。その中でも、企業が発信する情報ではなく、実際にその企業と何らかの関わりをもった人(選考・面接者など)からの情報は信憑性があるとみなされやすく、企業の雰囲気を知る情報源として扱われるようになりました。そのため、CXのデータを活用するなどの採用DXは重要視されています。
2.採用システムをDXにするメリット3選
採用システムをDX化することには、「優秀な人材を確保できる」という主な魅力があります。しかしこれは、採用システムをDX化したのちの成果ともいえる内容であり、その他にも隠れたメリットがいくつか存在することも忘れてはなりません。
ここからは、採用システムをDXにするメリットを3つ紹介します。
2-1.採用力が高まる
企業が採用活動を進める際は、求人サイトなどに掲載費用を支払って求人広告を掲載することが基本です。しかし、この掲載費用は決して少額ではありません。そのうえ多額の費用を支払った分の採用効果が確実に見込めるわけでもない点が難点といえます。
採用DXを実施して質の高い採用活動を行いCX・EXを向上させられれば、SNSをはじめとしたインターネット上で高い評価の情報・口コミの増加が見込めます。結果として、「働きやすく、従業員の満足度が高い企業」というイメージが拡大し、従来のように求人広告を掲載しなくても求職者からの応募が増える可能性があるでしょう。このように採用力の向上が大いに期待できる点は、採用DXの大きなメリットといえます。
2-2.ミスマッチを減らせる
採用DXとして、蓄積データをもとにCXを強化するためのコンテンツ制作を行うことで、「企業が求めるターゲット層」を認知してもらったり、企業が求めるターゲット層に向けた有益な情報を発信したりすることが可能です。
採用CXを強化させることで、さらなる応募者の増加はもちろん、採用後のミスマッチを最大限防ぐことできます。ミスマッチによる早期退職を防ぐことができれば、従業員の負担軽減にもつながるでしょう。
2-3.業務の負担を軽減できる
オンライン化が主流となる以前の採用活動は、応募者の管理や企業説明会・面接の日程調整、各種問い合わせや内定連絡など非常に多くの業務を行う必要がありました。年間を通してのしかかる業務量は、採用担当者の負担にもつながります。
しかし、さまざまな採用システムを導入した採用DXを実施することにより、応募者管理や日程調整、問い合わせ・内定の連絡を自動化させられ、採用担当者の業務が大幅に軽減されるでしょう。業務負担を軽減させられるだけでなく、コスト削減(人的コスト・採用コスト)・業務効率化の向上にもつながる点は非常に大きなメリットです。
3.【STEP別】採用DXの進め方
新卒採用・中途採用は、柱として「あつめる力」「つかむ力」「さばく力」「くどく力」の4つの要素に分けられます。
あつめる力 | 企業を認知し、興味をもってもらうフェーズ |
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つかむ力 | 説明会や選考において、企業の魅力を訴求するフェーズ |
さばく力 | 選考案内・合否連絡などの運用フェーズ |
くどく力 | 内定出し・内定辞退・内定承諾などにおいて、企業と応募者双方で納得の結果を出すフェーズ |
採用DXを進める際は、あらかじめ上記4つの柱について理解しておくことがベストです。
ここからは、採用DXの進め方について順番に解説します。
3-1.【STEP1】組織の現状分析・CXの把握
採用DXを進めるにあたり、まず必要となるステップが「組織の現状分析・CXの把握」です。適切な方法で採用DXを進めるためには、現状の把握が欠かせません。
CXを含めた組織の現状を分析・把握し、必要に応じて各業務のIT化・デジタル化を進めます。従業員体験を指すEXを向上できれば、求職者に向けて働きやすさをはじめとした企業の魅力をきちんとアピールすることが可能です。
CXの把握には、フレームワークや面接後のアンケート実施がおすすめです。応募者の需要や行動の傾向を把握することで、理想のCXを発見できるでしょう。
3-2.【STEP2】CXの再定義・EXの課題抽出
組織の現状分析・CXの把握を行ったあとは、CXの再定義として理想のCXを明確にします。加えて、EXの課題抽出も行いましょう。
理想のCXを再定義する際は、「キャンディデートジャーニーマップ」の活用がおすすめです。キャンディデートジャーニーマップとは、候補者の行動や思考を時間軸で見える化し、情報収集~応募・入社の意思決定のストーリーを設計するという手法を指します。再定義した理想のCXと、キャンディデートジャーニーマップの活用により発見したデータを活用・整理することで、必要な施策が見えるでしょう。
またEXにおいても、デジタル化できる領域はないか・効率化を図れる業務があるかなどの課題を抽出します。採用活動における一つひとつの業務を洗い出して検討するとよいでしょう。
3-3.【STEP3】施策の実行・改善
理想のCXの再定義・EXの課題抽出を実施したあとは、CXの改善・強化に導くための施策とEXの課題解決に向けた施策の実行を行います。基本的には、採用システムを活用した施策となるでしょう。
しかし、採用活動におけるプロセスは多岐にわたるため、適切なシステムはそれぞれ異なります。例えば、必要な人材を見極めるAI適性検査システムや、候補者・応募者のコミュニケーション自動化ツール、オンライン面接ツールの導入、選考管理システム、採用支援ツールなど導入すべきITツールも多岐にわたるでしょう。
ここまでのステップで発見した課題や改善点をふまえ、適切な採用ツールを選定することが大切です。さらに、ツールを活用していく中でさらなる課題が発見した際にも、改善に向けた施策を実行することも大切といえるでしょう。
4.採用DXを進めるコツ
採用DXを進めるうえでは、社内にDXスキルを有する人材が欠かせません。社内にDX人材がいないという場合は、すでに働いている人材をDX人材として育成するか、必要に応じて外部の人材を活用するかの2つの方法があります。
会社規模によっても異なるものの、DX人材は基本的に複数人配置する必要があります。すでに働いている数名の社員をDX人材に配置すると、その分の穴埋めが必要となり、一時的ではあるもののほかの社員の業務負担が増加する可能性も高いでしょう。
短期間でDX人材を育成することは困難な点もふまえて、外部人材の活用が最もおすすめです。DXに関する知識を有した外部人材を活用することにより、人材育成の時間をかける必要なく短期間で採用DXを実現できるだけでなく、さらなる業務効率化の促進につながるでしょう。
まとめ
採用DXは「データとデジタル技術を活用(デジタル化含む)して、優秀な人材を確保すること」です。採用DXの実施には、採用力の強化・ミスマッチの減少・業務負担の軽減などあらゆるメリットがあります。
採用DXを進める流れは、「組織の現状分析・CXの把握」→「CXの再定義・EXの課題抽出」→「施策の実行・改善」となります。しかしこれらは、DXに関する知識を有した人材がいなければスムーズに進めることができません。